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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
81/283

挑む ~航目線~

「仲西くん、ちょっと」

昼休み、クラスの女子が興奮ぎみに言う。

「なに?」

「ーー二年の澤野春先輩が呼んでる」

ーーーなんだよ…。


教室の前に、確かに春先輩がいた。


いま、教室に茗子ちゃんは、居ないようだ。






「なんスか?」

なぜかバスケ部の部室にまで連れてこられ、

あからさまに不機嫌そうな声で用件を聞く。


「今日…茗子を痴漢から助けてくれたんだってね。ありがとう」


ーーー助けてなんかいない。

最初は、見て見ぬふりしていたのだから。

関わりたくなかったから…。

でも、さすがにバスを降りなかった時は焦って…。


「ーー茗子ちゃん、顔合わせづらいって言ってましたけど?もうおしまいじゃないんですかー?」

俺が喧嘩口調で挑発する。


「誰のせいだと思ってんだよ…」

春先輩が珍しく、感情を露にした。

「お前が茗子にキスするからだろ!!」


「そんなに大事なら、もっとちゃんと捕まえとけよ…」


「ーーーお前に言われなくても…」

頭に来ていた俺は、春先輩の言葉を遮っていた。


「捕まえてないから、痴漢なんかに遭うんだろ!

茗子ちゃんが痴漢に遭った後、どんだけ震えてたか…」


ーーーーそして、

震えながら一番最初に言ったのは、

「ありがとう」ではなく「ごめんなさい」だった。


俺が話し掛けないでと言ったから、

助けてと言えなかったのかもしれない。



俺は関わりたくなかったから、

見て見ぬふりしていたのに。


それよりも自分と関わらせてしまったことを気にして…謝ったんだ。


『私は…平気だから、先行ってて』

涙目であんなに怯えて…

それどころじゃないはずなのに、

俺なんかの気持ちを考えて…。



本当に、勘弁して欲しいーー。


春先輩(このひと)相手に闘うなんて、

無理だって思ってるのに…。



「俺、やっぱり茗子ちゃんが好きです。諦めたくない。―――春先輩、覚悟してください」


言葉にしたら、

無理していた気持ちがスッと消えていった。



ーーー次の恋を探すよりも…、

よっぽど清々しい気持ちになった。


「俺、もう一回、アタックします」

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