進路
「あのさ、今日学校終わったら、勉強会しない?」
朝、甚が私と奈菜に言った。
「それってさ、茗子にテスト勉強教わりたいってこと?」
奈菜がすかさずつっこむ。
「あ、バレた?」
笑いながら答える甚。
「もうすぐ中間じゃん?俺、部活ばっかで勉強出来てなくてさー」
「ま、私も茗子と勉強出来たら成績あがるし、嬉しいけど?どう、茗子先生!」
「いいよ、じゃあ放課後うちでやる?」
「ありがとうー」
「助かるわ、サンキュ」
と、甚が自分のクラスに戻っていった。
そしてしばらくすると、また私のところに 来て言う。
「あのさ、航も誘っていいか?」
「え?だれ?」
「お前なぁ……、仲西航だよ、
こないだカラオケ行ったじゃん。」
「良いじゃん、良いじゃん!!ね、めいこー」
「う、うん。」
奈菜の迫力に圧倒されて、頷くしかなかった。
「元々サッカー部つながりなんだって、甚と仲西くん」
奈菜が言う。
「今年はクラスも同じでかなり仲良くなったらしいよ、甚と」
「へぇ…」
ハルくんはバスケ部だったな………。
とか、また考えてるし!!
「そういや茗子は、部活やってないよね」
「私、運動オンチだし、かといって、やりたいこともなかったからね…」
「まぁ、生徒会だしね。今年は書記?」
「うん、まぁ…」
「まぁ、もう3年だしね、サッカー部ももうすぐ引退だろうし」
「そうだね…」
生徒会も、ハルくんが居たから入っただけで、
今はもう意味がない。
なにやってんだろ、私はー――。
何してたんだろー―ー。
放課後、私の家に甚と奈菜、そして仲西くんが来た。
「あら、茗子、おかえりー」
母が顔を出す。
「ただいま、友達と部屋で勉強するね」
「あら、甚くんに奈菜ちゃん!!久しぶり!!」
「お久し振りです、おばさん!」
「あと、新しいお友達ね、何君?」
「あ、仲西航です。初めまして、お邪魔します。」
「どうぞどうぞ!よろしくね!」
「お母さん…もう良いから…」
やたらハイテンションな母を押しやりつつ、
部屋に案内する。
「じゃあ初めは、数学からー―」
早速、問題集を開くと、奈菜が緊張した顔して言う。
「あ、その前にさ、ちょっと仲西くんに質問!!」
「ん?何?」
「仲西くんってさ、どこの高校狙ってるの?」
「あ―…、西かな。西高。家から近いし」
西高ー―ー、ハルくんと同じところ…。
「茗子ちゃんも、西高でしょ?違う?」
と、なぜか仲西くんが私に話を振ってきた。
「う…いや、まだ…決めてない…」
つい、うんと返事しそうになった。
でも去年までは西高って思ってた、ハルくんがいるから。
でも、今はー―ー。
「そっか、でももし茗子が西高だと寂しいな…私の学力じゃ、東高が妥当だし。仲西くんも西高なのか…」
奈菜がしょんぼりとつぶやく。
進路…自分で決めないと行けないんだよね………。
考えてなかったけど。
「よし、やりますか、とりあえず目の前の中間テストでしょ!」
甚の声で我に返る。
「じゃあ、この問題集の話からなんだけど…」
仲西くんが私を見つめていることには、気付かず、
数学の勉強を開始したー―ー。