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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
78/283

過去のキス ~春目線~

気にしないようにしていたけれど、

やっぱり心のどこかに引っ掛かっていたこと。


ーーー仲西と茗子の関係。



俺の質問に、茗子が真っ青になった。


茗子が何も言わなくても、

それが、真実(ほんとう)なのだとすぐにわかる。


「本当なんだ…」

ため息混じりに声が出た。


「俺と…付き合う前でしょ?」

茗子が黙って頷く。


ーーーじゃあ俺は何も言う資格ないじゃないか。


頭では分かってるけど、胸のざわつきが止まらない。


「ハルくん…怒ってる?」

茗子が上目使いで俺を見る。


「あいつこと、好きだったんだ?」

口から出た言葉に自分で驚いた。

ーーー何、聞いてるんだ…。



「私、ハルくんのこと、諦めようって思ってた…。かすみ先輩とずっと付き合ってると思ってたから。航くんも…最初はかすみ先輩が好きだったんだって。でも中学入ったら、もうかすみ先輩はハルくんと付き合ってて。

ーーーそんなハルくんの隣にいた私の気持ちも…まっすぐ見てくれていて。」

言いながら茗子の目から涙が溢れ出す。


ーーー聞いたら、

余計に心の中の闇が広がった気がした。


「私、ズルいよね…。それなのに、ハルくんがかすみ先輩と別れてたの知ったら、すぐに気持ちがハルくんに戻って…。

ーーー航くんをずっと傷つけてたのに、そんなことにも気付かないで“友達”だって思ってた…。」


「茗子…」


「ごめん…。」

茗子は涙を拭うと、俺の部屋から出ていった。



「茗子の過去の話聞いて…満足?」

入れ違いに咲が部屋に来る。


「…聞いてたのか?」

「聞こえたんだよ」

咲は悪びれずに言う。

「俺は実際見ちゃったから、知ってたけど。でも茗子の気持ちが分からなかったから、これでスッキリした」


「見たのか…」

俺の声が低くなる。

「花火大会の日だろ」

言いながら咲が俺のイスに勝手に座る。

「やっぱり……」

あの日だったのか。

茗子が泣きながら帰ってきたあの日…。

ずっと引っ掛かってたーーー。


「キスぐらいでなにショック受けてんの?自分が初めてだとでも思ってたわけ?」

咲が悪意のある笑みを浮かべて言う。

「俺だって、それぐらいしたけど?」

「は?」

さらっと言い放った咲に、聞き返す。


「クリスマスの日、(おまえ)が茗子を置いて帰った後。ぶつけたんだ、俺の気持ち…」


「何、勝手なことしてんだよっ」

咲の胸ぐらを掴む。


「勝手なこと?なんで春にそんなこと言われないといけないんだよ?お前がさっさと、付き合わないからだろ。だから俺が諦められなかったんだろーが。」


ーーー咲のことばが、胸に突き刺さる。


仲西(あいつ)のことだって一緒だろ、お前がかすみって女なんかと付き合ったりしなければ良かったんだ。最初から茗子を幸せにしてやれば良かっただけの話だろ…茗子を“妹”扱いして、いつまでも向き合わずに逃げてたやつに、付き合う前のことをとやかく言われたくない!!」


「俺は、最初はお前と茗子が付き合えばって…」


「それが、余計なお世話だって言ってんだよ。“兄貴ヅラ”なのか知らねーけど、俺はとっくに茗子の気持ちなんてわかってた。だからお前のそういうところがずっと気にくわなかったんだよ!」

咲が俺の手を払うと睨んで言う。


「俺が茗子にフラれると思ってたから、そんなこと言えんだよ…」


そして俺の部屋から出ていった。



俺は付き合う前のことを、何も言う資格がない。

それは分かっている。


分かってるけど、

過去の話にも、どうしようもなく嫉妬してしまうんだ。


まさか、(おとうと)にまでキスされていたなんて…。


俺は本当に愚かだ…。

もっと早く自分のものにしておけば良かったのに。

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