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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
73/283

バスケ部のマネージャー

「どうだった?バスケ部のマネージャーは。」

帰りながら、ハルくんが聞いた。


「…私どんくさいから出来るかどうか心配、かな」

ーーーーテキパキと動く先輩マネージャーが、

かっこ良かったけど、

私に務まるのかと言われると自信がない。


「そっか」

ハルくんがそう言うと、黙って歩き出す。


ーーーーなんか、素っ気ないな…。


手を繋いでいないせいか、少し寂しくなる。


「昨日は、サッカー部のマネージャー見学してきたんだっけ?」

「あ、うん」

私が突然の質問に驚きながら返事をすると、

「どうして?」

ハルくんが畳み掛けるように言う。


「え…特に意味はないけど…」

「仲西くん、だっけ?そいつもサッカー部だよな?」

「ハルくん?」

ーーーーなんだか様子のおかしいハルくんに、

私が顔を覗き込もうとすると、

「ごめん、何でもない…」

困ったように笑って、ハルくんが言った。


「茗子がバスケ部のマネージャーになったら、こうやって一緒に帰れるな」


ーーーーそんな言い方されたら…、

やるしかないじゃん…。






「おはよー」

翌朝教室へ行くと彩に挨拶される。

「おはよう」

「ねぇ茗子、バスケ部のマネージャーやる?」

「ーーーそのつもり…」

ーーーー向いてないけど。

私が答えると、

「そっか…私まだ悩んでて…とりあえず今日は料理部に顔出してみようかなって思ってるんだけど…一緒にどう?」

ーーーー料理かぁ…楽しそう。

でも、ハルくんの言葉を思い出すと、

やっぱり料理部には入れない。


「う、うん。じゃあ見学にだけ…」

「わぁ、茗子ありがとー」

彩が喜んで言う。


「あの、相田さん…」

突然横から、話し掛けられる。

「今日から朝は職員室に行かないと…クラス委員だから」

仁科くんが申し訳なさそうに言う。

「あ、ごめんね、忘れてた…」


彩に、ちょっと行ってくるね、と伝えて席を立つ。


並んで仁科くんと歩いて職員室に向かう

なぜか皆に見られている気がする。


「あの…やっぱり迷惑だよな…僕が立候補なんてしたから…」

仁科くんがうつ向いて言う。

「迷惑?どうして?」

「相田さん、僕なんかと一緒に歩いてると皆にキモいって思われるんじゃないかと…」

「仁科くん…」


ーーーー仁科くんは、

確かに前髪も長くて顔がよく見えないから、

少し不気味ではある。

性格もネガティブらしく、

そのせいで皆から『オタク』と呼ばれているらしい。


「私は、立候補なんて出来ないから、すごいと思うよ。」

「そう、かな…」

励まそうとしてみたけど、

仁科くんはうつ向いたままで表情が見えない。


「相田さんはいつもそうやって、僕と話してくれるんだね」

「え?」

「中学の時も、女子はみんな僕のこと避けてたのに、相田さんだけは違った。」

ーーーーそれは…覚えてない…。


「だから今年同じクラスになれて嬉しくて…つい立候補なんかして…」

少し早口で話し始める仁科くんに、戸惑う。

「やっぱり好きだな…相田さんのこと」

仁科くんが、そう言ってからしばらくして、

あわてて口を押さえる。


「や、今のは違うんだ。いや、違わないけど。でも、告白とかじゃ、なくて。」

私が言葉に困っていると、

「分かってるんだ…一度フラれてるし、そもそも僕なんかが付き合えるはずないし。春先輩がいるんだから…」

自分に言い聞かせるように、呟く。


「ありがとう。」

私が言うと、仁科くんは驚いたような顔をした。

「僕なんかにお礼なんて…」


私は話をそらすように、

「お互いにクラス委員頑張ろうね」

と声をかけた。


職員室に着き、先生の御用聞きが終わると、

職員室を出たところで、

たまたま昨日のバスケ部の先輩マネージャーが、

職員室に入るところだった。


「おはようございます」

私が挨拶すると、

「お前さ…まさかバスケ部のマネージャーやるつもりじゃないよな?」

冷ややかな視線を向けられ、

私は血の気が引く感じがした。


「俺達バスケ部はさ、全国大会目標にしてるんだよ、そんなルールも経験もないやつがやれるモノじゃない。彼氏目当てなら、迷惑だ!分かったな!」

そうまくし立てると先輩は職員室に入っていった。


ーーーーそっか、そうだよね…。

先輩のことばに、私も納得する。


ーー自分のことしか考えてなかった…。

ハルくんと一緒にいれるって…ただそれしか…。






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