バスケ部のマネージャー ~春目線~
「今日…友達とバスケ部のマネージャー見学に行こうと思ってるんだけど…」
「え?」
「ハルくん…居るよね?」
おずおずと俺の顔を見上げる。
ーーーー日に日に可愛さが増す茗子。
本当に目が離せないな…。
朝からキスしたい気持ちを抑えて、答える。
「居るよ、もちろん。じゃあ今日一緒に帰れる?」
「うんっ」
嬉しそうに茗子が返事をする。
茗子がバスケは部のマネージャーになったら、
嬉しい気もするけど、
入学式以来、まるでアイドルのような扱いで、
教室や部室、廊下、至るところで茗子の噂を聞くから、少しだけ不安もある。
部活とはいえ、
茗子が他の男と話してるところを見て、
正直嫉妬しないとは言いきれない。
ーーーーどんどん独占欲が強くなる。
今までに感じたことのない貪欲さに、
自分でも嫌になるーーー。
茗子には、知られたくない。
「おい、あれって…」
放課後になり、親友の寛人と部室に行くと、
寛人が俺にこそっと言う。
「うん。今日見学に来るって言ってたんだ…」
「マジか!!おーい、茗子ちゃーん」
寛人が馴れ馴れしく話し掛けに行くと、
茗子がビクッとして助けを求めるようにこちらに視線を向ける。
「寛人、茗子が怖がってる。」
俺は寛人を茗子から引き離すと、
「茗子、覚えてる?寛人」
「あ、うん、中学から一緒でしたよね?」
中学で寛人とはあまり接点は無かったと思うけど、
茗子は覚えていたようだった。
ーーーーーなんだろう、少しだけ胸がざわつく。
基礎練習が始まっても、
みんなの視線は、常に茗子に向いていた。
「かわいいですよね…相田さん」
パス練習が始まり、
隣にいた一年生が話しかけてくる。
「俺はD組で一番遠いクラスだけど、
うちのクラスでも、騒がれてますもん。
すごい高嶺の花って言われてるんですよ、彼女」
「へぇ」
俺がパスを出しながら答える。
「春先輩幼馴染みって噂はマジですか?」
「あぁ。茗子は俺のーー」
“彼女”だと言おうとしたその時、
パスを受け取るのに失敗した後輩は、
転がったボールを取りに行く。
そして、戻ってきて、思い出したように、
「あ、でも、噂で聞いた話、相田さんと同じクラスの仲西ってやつは、キスまでした仲らしいですよ」
と言った。
ーーーー仲西…。
「でも今は、彼氏は別に居るとか」
「おい、お前バカだろ…」
寛人が後輩をど突く。
ーーーー後輩の声は周りに丸聞こえで、
寛人にも聞こえていたらしい。
ちょうどパス練習が終わったところで、
突っ込みたくてウズウズしていた寛人が、
すぐに後輩のところに来たらしい。
「その“彼氏”が、春なんだよ」
寛人が俺の代わりに、でかい声で言う。
「え、あ…春先輩が…」
後輩は驚いて口をパクパクさせる。
「鈍感すぎるわお前。てかそんな喋ってる暇あるならもっと練習本気でやれ」
「すみませんでした」
そんなことより、俺はさっきの後輩の話を思い出していた。
ーーーー仲西…。
やっぱりあいつは、ただの“友達”じゃなかったのか?