表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
69/283

放課後の出来事

ガイダンスが全て終わりになり、

帰ろうとして私はトイレに寄ってから、

教室へ戻る。


「仲西くんと相田さんって、キスしたことあるんだってー」

「え、でも二年のすごいカッコイイ先輩と付き合ってるって噂で聞いたけど」

「あぁ、そうそう。春先輩だろ、うちの中学じゃすでに常識だし!」

ーーークラスの皆が私の話題で盛り上がっていて、

入りづらい。

特に同じ中学出身の男子がペラペラと喋って注目を浴びていた。


…どうやら、航くんは部活で既に居ないみたいで、

少しホッとする。



「もともと、幼馴染みでさぁ。でも卒業間近ってときに発覚したんだよなー」

「良いなー私もあんなイケメンの幼馴染み欲しい!!」

「幼馴染みって、特権だよね!」

「でも相田さんって、可愛いもん、お似合いだよね」

ーーーお似合い?

その言葉に私は廊下でこっそり聞きながら赤面した。

「そ、相田は中学でも可愛いで有名だったからな、春先輩の隣にいても、他の女子にいじめられるとか、無かったわ。敵わないからだろうなー」


「うわー、凄すぎ。相田さんが彼氏居て良かったー絶対ライバルとかなりたくないもん!!」

「みんな、遠慮なく仲西くんと仲良くできるしね!」

「なんだそれ?うちのクラスの女子はみんな仲西狙いかよー」

男子が面白く無さそうに言う。

「当然!!うちのクラスのイケメン、仲西くんぐらいだしー」

「ひでー!」

愛莉がハッキリ言うと、

男子が大げさにリアクションして、笑いが起こる。


ーーーーなんか、皆すでに仲良くなってるなぁ…。


ますます入りにくくなって、

私はしばらく高校の中を歩いてみることにして、

教室に背を向け、歩き出した。




自分のクラスからまっすぐ渡り廊下を歩いて、

美術室らしき教室が見えてきた。


美術部の作品なのか、

廊下にズラッと作品が飾られている。


私はそれを、ひとつひとつ見ていった。

ーーーどれも、素敵…。


すると、美術室の中から、人の声が聞こえてきた。

ーーー今日も部活ってやってるのかな?


ドアにある小さな四角い透明な窓から、

背伸びして覗いてみる。



「!!!」

バッと慌ててその場に屈んで、

私はドキドキしたままの心臓を押さえる。


ーーー嘘…。


上半身のはだけた男女が、

抱き合っているのが一瞬でも分かった。


ーーーこんなところで、何やってるの…。


私は急いでその場を去ろうとして、

立ち上がると、

カッシャーンと

スカートに入れていた携帯電話が派手な音を立てて落ちたーーーー。


ヤバイ…バレる…。

急いで携帯電話を拾い、逃げようとしたその時、

ドアが開いて、

上半身裸のままの男の先輩が出てきた。



「……あれ?メイコちゃん?」

ーーーどうして私の名前を…。


一瞬疑問に思ったけど、

それよりここから逃げたい、と俯いたまま

頭を下げて立ち去ろうとした。



「待って待って!!」

笑いながら私の前に立ちはだかると、

その男の先輩が笑いながら顔を近付ける。


「もしかして、俺の事忘れた?首席で入学の、アイダメイコちゃん!」


ーーーこの人、確か、比嘉先輩…。


「あ、すみませんお邪魔して…」

「もしかして、シたかったの?メイコちゃんも」

比嘉先輩がからかうように、顎に手を伸ばすと笑顔で言う。


ーーーなんで、そうなるわけ?


すぐにその手を振り払う。

「…早く、何か着てください」

「照れちゃって、かーわいぃ」

ーーー上半身裸のまま、近付かれると…目のやり場に困る。


ガラッとドアが開いて、

美術室から女の先輩が出てきた。


「比嘉くん…」

思った感じと違って、

三つ編みをした真面目そうな先輩だった。


「あ、高橋さん、ごめんなーもう飽きたからこれで終わりなー」

「え…」

「高橋さん、あっさりオトせちゃったからさ。あ、ヤるだけだったら、たまに相手してもいいけどーー」

ーーー平気な顔してこの人、何言ってるの?


私が、突然修羅場になり、困惑していると、


パーンと音が響いた。


高橋さんと呼ばれた女の先輩が、

目に涙を溜めて、

比嘉先輩の頬を全力で叩いたのだ。


そしてダッシュで行ってしまう。


「ひどい…」

私が彼女の心中を思って嘆くと、


「あーぁ、やっぱ地味子は重くなるからダメだな…」

頬を押さえながら、比嘉先輩が言う。


その言葉に私は腹がたって、

黙って教室へ戻ろうとする。


「メイコちゃんは、澤野春の彼女?」

「…そうですけど」


後ろから声をかけられたので、

振り向かずに低い声で返事だけする。


「…へぇ」

比嘉先輩は、それだけ言うと、追ってこなかった。




ーーーーなんなの、あの人。

最低な人、最低な人、最低な人!!


イライラしながら、教室へ戻る。

「あ…」

つい、さっきのクラスの皆の盛り上がりを忘れて

教室へ足を踏み入れてしまった。


まだ盛り上がっていたのか、

急に静まり返って皆が一瞬私を見る。



「あ、茗子ちゃん!どこ行ってたの?一緒に帰ろうと思って待ってたのに」

愛莉が私に言う。


「あ、ごめんね…」

「てか、同じ中学出身の男子に中学時代の茗子ちゃんの話、色々聞いちゃった!」

「そ、うなんだ…」

ーーー知ってるけど。


「茗子ちゃんの可愛さは、中学から有名だったとか。あのイケメンの春先輩が幼馴染みの彼氏、とか。」

「本当羨ましいー」

「ね、今度春先輩紹介してー、お近づきになりたいー」

いつの間にか女子に囲まれる。


ーーーーう…、こういうの、苦手。


「う、うん。」

そして、

愛莉とクラスの女子達と一緒に帰る事になった。


「あ、ちょっと待って」

携帯電話を出して、

ハルくんに、クラスの子と帰るね

とだけメールしておく。


「あ、茗子ちゃん、私と連絡先交換しよー」

「私も!!」「あ、待って、私も!!」


愛莉が私の携帯電話を見て、

すかさず自分の携帯電話を鞄から取り出す。


クラスの女子達も、皆持っていて、

突然、連絡先交換会が行なわれた。


ーーーなんか、こういうの…高校生っぽいなー。


無事に友達が出来たことに嬉しく思いながら、

私は高校生活の一日目を終えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ