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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
67/283

新しいクラスに

「では、新入生代表、相田茗子さん」

「はい」

司会の先生に名前を呼ばれ、私は壇上に上がる。


すると、全校生徒の前だと意識してしまい、

一瞬緊張で青ざめそうになった。


でも、ハルくんの応援のことばを思い出して、

大きく息を吸うと、私は挨拶文を読み上げる。


「春の息吹が感じられる今日のこの良き日にーーーー」






入学式が無事に終わり、各クラスへ戻る。

私のクラスはA組、菜奈はC組で、甚はB組だった。


「茗子、新入生代表なんて、すごいじゃん!知らなかった!!頑張ってたね!」

教室へ向かう途中、

菜奈が私に気づいて声をかけてくれる。


「ありがとう…緊張で声震えたけどね…」

私が笑って言うと、

「あの、さっきの…相田さん?」


突然、初対面の女子に話しかけられる。

「あ、はい…」

「私もA組で同じなの!鈴木愛莉(あいり)、よろしくね」

「あ、うん、よろしく」


「早速友達ゲットじゃん、良かったね!じゃあね」

菜奈が私に囁くと、先に行ってしまう。


「相田さん…茗子ちゃんて呼んでも良い?」

「うん」

「私の事は愛莉って呼んでね」


ーーー明るくて、なんだか菜奈みたいな子だな…。


私が圧倒されていると、愛莉が言った。

「早速だけど、今朝のって彼氏?」

「え?」

私は驚いた声を出す。

「一緒に登校してたじゃない?二年のすごいカッコイイ先輩と!!」

愛莉が興奮ぎみに迫って言う。

「あ、うん、彼氏…」

“彼氏”って言える日が来るなんて…

内心うれしく思いながら照れていると、


「うわーそっかー。私、超メンクイだからさぁ。折角理想の彼を見つけたと思ったんだけどなー。」


私の言葉に、

あからさまにがっかりして愛莉が言った。



そして、

教室に着くと出席番号順に席に着くように黒板に書かれていた。


私は、やっぱり一番かーー。

出席番号は、一番以外になったことがなかった。


ドアからすぐの一番前の席に着くと、

先生が入ってきた。


「皆さん、入学おめでとう。私は担任の田中珠子です。これから一年間よろしく。」

ーーー優しそうな先生だな…。

「では、早速、自己紹介いきますか。はい、相田さんからお願いね」

ーーーーうわ、そうだった。自己紹介…毎年あるのに忘れてた。


急にふられて緊張してしまう。

「えっと…長岡中出身の相田茗子です。よろしくお願いします」

なんとかそれだけ言うと、

拍手が起こりホッとして座る。


「はい、じゃあ次ーーー」

そうして、順番に自己紹介が回っていく。

私は自己紹介をしている人の方を恥ずかしくて見れずに、なんとなく前を向いていた。



「はい、じゃあ次、仲西航さん」

ーーーえ?

中盤に差し掛かった頃、

聞き慣れた名前に、驚いて顔を上げると、

ちょうど航くんが席を立つところだった。


ーーーー航くん、同じクラスだったんだ。


だったら、声かけてくれてもいいのに…。


そういえば、

卒業式前に後輩の子に告白された時以来、

航くんとは話していなかった。



私は航くんの自己紹介が終わっても、

航くんに視線を送っていたけれど、

航くんがこちらを見ることは無かった。


なんだか、避けられているようで悲しくなる。


ーーー私がハルくんと付き合いだしてからだ…。


なんとも言い様のない、

モヤモヤした気持ちが私の胸の中に生まれた。


ーーーー友達で、居たかったけど…、

やっぱりムシのいい話だよね…。



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