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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
65/283

入学式の前に…

桜の花びらが舞い散る校庭。


私は、今日から高校生になった。

「おはよ、茗子。今日からまたよろしくな」

ハルくんが笑顔で言う。


同じバス停からバスに乗り、

バスを降りたらすぐの同じ高校に歩いて向かう。


こんなささやかな事でさえ、

私にとってはすごく幸せな時間。

「ごめんな、結局日曜……」

「仕方ないよ、バスケの練習試合、休むわけには行かないでしょ?」

「春休みも結局、全然時間とれなかったな…」

「部活、大変そうだね」

「まぁ、強豪校だからな、一応」


ハルくんとそんな話をしながら

正門に差し掛かると、一気に皆の視線を集める。


ーーーうわ…この感じ。一年ぶり…。


「春くん、おはよー」

クラスの女子なのか、ハルくんに挨拶してくる。

「おはよ」

ハルくんも笑顔で応える。


「ねぇあの子って…」

「ほら、有名な幼馴染みの…」

「赤いリボンだから、一年でしょ?」

「うわ、追いかけてきた系だ?」

女の先輩たちのヒソヒソ話す声が聞こえてくる。


ーーーー結局、こうなるのね…。

ハルくんのモテモテっぷりは、

昔からだから分かってたけど、本当にすごい。


ーーー私、大丈夫かなぁ…。


「春、茗子ちゃん、おはよう」

私が不安に陥りかけた時、

ふいに後ろから声をかけられて、振り向くと、

「あ…」

かすみ先輩がにこやかに立っていた。


ーーーハルくんの、“元カノ”…。

どうしても、そういう“称号”が頭をよぎる。




「その感じだと、二人上手くいったのね!」

笑顔でかすみ先輩が言う。

「あ、そうだ、報告しなくてごめん!」

ハルくんも笑顔で言う。

「ひどいじゃん!誰のおかげだと思ってるわけー?」

かすみ先輩がハルくんの腕を小突きながら言う。


ーーーー二人、仲良いなぁ…。


入り込めない空気に、疎外感を感じて、

私はうつ向いた。


かすみ先輩は、そんな私に気遣ってくれたのか、

「あ、じゃあ私、彼氏とクラス発表見に行くから、じゃあね」

と、そそくさと立ち去った。



「あ、俺も新しいクラス見てこないと」

「うん」

「新入生は、あっちにクラス発表されてるから、行っておいで」

ハルくんが、指差して教えてくれる。


「ありがと、行ってくる」

「うん、また帰り連絡するから」

ハルくんが言う。


私はハルくんに背を向けて歩き出す。

「あ、茗子!」

二、三歩歩いたところでハルくんが呼び止める。

「?」

私が振り向くと、

「頑張れよ、新入生代表!!」

ハルくんが手を振って言った。


不思議…ハルくんの応援のことばが、私の勇気に変わる。


「うん」

私は笑顔で応える。


ーーーー私、頑張るよ。


ハルくんの“彼女”として、

これから、恥ずかしくないように。



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