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いっこの差  作者: 夢呂
【第一章 】
6/283

一歩

ハルくんは去年、生徒会長だった。

男女問わず誰にでも優しいし、人望も厚い。

だから、ハルくんの周りにはいつも人がいて、

もちろんファンクラブ的なものも、あった。


漫画に出てくる、王子的な存在で。

告白とか、出来る子は本当にごく少数で、

「みんなの春くん」みたいな暗黙の了解があった。



私はそんなハルくんの、

「唯一の幼なじみ」と公認で、

近くにいても、いじめられたりとか、

妬まれたりとかはなぜかなかった。


だから…

隣にいることが、許されてたんだと、

思い上がってたんだ。

他人の評価に、自惚れてた自分が恥ずかしい…。



「んで、どうするの?」

ここ最近思いっきり凹んでた私を見かねて、

菜奈が放課後うちに来てくれた。

とりあえず、この間の朝のお弁当のところから話した。


「そっか………。いやぁ、まさか、茗子も知ってたとは…私もかすみ先輩に聞いた時はびっくりしたゎ、先輩いい人だけどさ。まさか、春先輩とー――」

「うん…」

「内緒で付き合ってたのは、ファンクラブの子達からイジメられないためだったみたいね。」

「そっか…」

「抜け駆けーとかって言われて呼び出されるからね、告白しただけで…恐ろしいゎ、まじ。」

「そうだね…」


私の生返事にため息をつく菜奈。


「そういやさ、仲西くんはその後どうなの?」

「仲西…くん?」

唐突に聞き慣れない名前が出て戸惑う。


「あ、忘れたね、その反応。」

苦笑いで話し出す、菜奈。


「こないだ、甚とカラオケ行ったじゃん」

「あぁ、あの時の…その人が何?」

私が聞き返すと、あきれた声で菜奈が言う。

「一応、言っときますけど、仲西航(こう)くん、春先輩が卒業した今、うちの学校でトップクラスですよ」

「トップクラスなの?頭いいんだ」

「いや、頭じゃなくてさ…もぅどうして本当に茗子は春先輩以外は眼中にないのよ…。」

「?」

「イケメン、でしょ。顔とか、ちゃんと見てない?」

「あぁ、見てなかった…かも」

「そぅ…」

菜奈があきれた顔で一息つくと、

気を取り直した顔で説明しだす。


「茗子に直接、告白しようとするとか、なかなか居なかったじゃん、最近。」

「うん…」

「茗子が近寄るなオーラ出してるから、まぁ大抵の男子は近づけないんだけどさ、そんな中、あの人は直接来たわけじゃん。」

「うん…」

「もうちょっと心開いても良いんじゃない?」

「そうかな…?」


「まだ、引きずってるの?中学入ってからの事…」

「そう、かも」


―――中学入った時は、クラスの男子とも、特に気にせず仲良くしてた。

でも、仲良くすると、すぐに告白されるようになり、怖くなってしまった。

私は「友達」だと信じてたのに、裏切られた気持ちになってしまった。

それ以来、男友達は避けてきた。


結局、今信じられる男友達は、(じん)一人だった。





「私としては、せっかくのイケメンだし、門前払いするより、もう一度友達作りのリハビリって感じで仲良くしてみたら良いと思うけどな。茗子も、変わらないと!!ねっ!」


確かに…このままずるずるハルくんのことを想ってても、ツラいだけだ。


「うん…」


「よしっ!頑張れ!!」

私が頷くと、菜奈は嬉しそうに声をあげた。


「てかさ、菜奈が仲西くんと仲良くなりたいだけでしょ?」

「あ、バレた?」

笑いながら菜奈は、帰ると言って部屋を出た。



「じゃあ、また明日ねー」

家の前で手を振ると、菜奈は帰っていった。

家の中に入ろうとすると、隣の玄関から、(さく)ちゃんが出てきた。

「あ…」

「咲ちゃん、こんばんは。」

「うん…」

なぜか、気まずそうにする咲ちゃん。

「こんな時間から、どっか行くの?」

「いや、コンビニにでも行こうかと…」

「へぇ」

「茗子も、行く?」

照れながらも話してくれる咲ちゃんが、

なんだかかわいくって、

つい、笑顔になる。


「行こうかな、咲ちゃんと歩くの、久しぶりだしね」

私たちは並んで近くのコンビニまで歩き出したー―ー。








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