合格発表
「え、やったじゃん!!」
菜奈が叫ぶように言った。
「うん」
私は照れながら言う。
ーーーー信じられない、幸せ過ぎて。
本当は、まだ少し不安だけど。
翌朝、学校へ行くと、
ずっと元気がなくて心配してくれてた菜奈に、
私は一番にハルくんと付き合うことになったと、
報告した。
口に出してみても、なんだか信じられなくて…。
「良かったね…」
目を潤ませて、菜奈が言った。
「うん…」
「なんか茗子、不安そう…。」
「うん…」
ーーーーハルくんと付き合うことになったことは、
嬉しい。
嬉しくて、浮かれている自分がいるのは本当。
でも………
昨日のハルくんのことばは、
何かが足りなくて……引っ掛かる。
急な展開についていけてないだけなのかな…。
片想いが長過ぎてーーー。
「茗子?」
「ごめん、何でもない…」
笑顔で答える。
「相田さん…ちょっと」
昼休み、私は職員室に呼ばれた。
担任の先生が嬉しそうに言う。
「先ほど、西高から連絡が来たよーーーおめでとう!合格だ」
ーーー良かった…これでまたハルくんと一緒だ。
「ありがとうございます」
私も笑顔で答える。
「首席だそうだ」
「え?」
「入学式の生徒代表の挨拶、頼まれたぞ!しっかりな!」
私の肩をポンと叩くと、先生が満面の笑みで言う。
ーーーー私が…首席?
放課後、菜奈が職員室に呼ばれ、
甚と航くんと教室で待っていた。
「茗子、良かったな、おめでとな!!」
甚が言った。
「ありがとう、来年からも宜しくね」
私も笑顔で言う。
「なんか、昨日までの茗子が嘘みたいに今日は明るいな!!合格したからか?」
甚が言う。
「あ…心配かけてごめんね…。」
「春先輩のことでずっと落ち込んでたからなー。」
「その事なんだけど…付き合う…ことになってーー」
「え?」「は?」
航くんと甚が驚く。
ーーーーそりゃ、そうだよね。
私だって、驚いてるんだから。
「………そっかぁ、良かったじゃん!ついに両想いになったんだな!!」
甚がしばらくして明るく言う。
「お待たせ!!」
その時、ちょうど菜奈が教室に戻ってきた。
明るい声に、菜奈も西高合格だと分かる。
「甚、私も西高に行けるよ!!」
笑顔で言う。
「やったじゃん!!頑張ってたもんな!!」
甚が頭を撫でる。
「今日は久しぶりに、四人でカラオケでも行く?」
「賛成!」
甚と菜奈がはしゃいで言う。
「ごめん…俺、今日ちょっと」
ずっと黙っていた航くんが、
悲しそうにそう言うと、先に帰っていった。
「なんだよあいつ、いきなり…」
甚が言う。
「ごめん、私も今日ハルくんと約束してて」
二人の邪魔をしないように、
そう嘘をつくと、
先に教室を出る。
ーーーー約束はしてないけど、
今日会えたら良いな…
合格したこと、報告したいし。
そう思いながら、靴箱で靴を履き替え、
何気なく正門の方を見る。
ーーーーハルくん!
ハルくんが立っていたことに気付いた。
え、なんで?
突然のことに、ドキドキする。
と、ハルくんは航くんと話していることに気付いた。
「俺には“妹”とか言っておいて、何がどうなったら付き合うことになるんだよ?」
「…………」
「茗子ちゃんをあんなに泣かせて、今さらーーー」
「もう泣かさない、絶対」
航くんの言葉を遮って、力強くハルくんが言った。
ーーーハルくん。
私が二人に近づくと、
航くんが先に気付いて、何も言わずに帰っていった。
「ハルくん…」
「あ、おつかれさま。」
ハルくんが私に笑顔を向ける。
「どうしたの?」
並んで歩き出す。
「部活早く終わったから…」
「そうなんだ」
ドキドキしながら言うと、
急にハルくんが立ち止まった。
「嘘。本当は茗子に会いたくて来た」
照れたように笑いながらハルくんが言う。
ーーーーう。
その顔、ズルい。
「私も…ハルくんに報告したいことあったんだ」
「何?」
「合格だって、西高」
「良かった!これで来年からは毎日一緒だな」
喜んでくれて、私も嬉しくなる。
「入学式の挨拶は…憂鬱だけど…」
「茗子、首席なの?」
「そうだった…みたい」
「本当すごいなー、頑張れよ!入学式楽しみにしてる!」
「うん…」
こうやってまた、隣を歩けるなんて。
それだけでも、嬉しいのに。
隣が私の居場所だと言われたような気がして、
幸せ過ぎて、泣きそうになる。