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いっこの差  作者: 夢呂
【第一章 】
54/283

告白されたあと ~春目線~

『私、ハルくんが好きなの…』


“妹”のようにかわいがっていた子に、

自分のことを好きだと言われて、

信じられる訳がなかった。


俺は咄嗟に、

“幼馴染み”として好きだと言ったのだと、

脳内変換した。



ーーーでも、俺の言葉に、

かなりのダメージを受けた茗子の顔を見て、



茗子の“好き”は、

異性としてのそれだと、

確信に変わり、俺は困惑した。



ーーーーいつから?


俺は、

(おとうと)と上手くいけば良いと思って、

ずっと二人のことを見守ってきたつもりだったのに。





その時、急に頬を殴られて、激痛がはしった。


咲が、俺を殴った。


ーーーーでも、そんな痛みはどうでも良かった。

目の前で堪えきれず涙を流す茗子を見たら、

俺の痛みなんて、どうでも良かった。


ーーーー俺が泣かせてしまった…。



昔からそれだけはしないように、してきたのに。






――――俺は、すぐに茗子の前から去った。

これ以上、いない方が良いと思ったから。


ーーーーきっと咲が、慰める。

これでいいんだ。


そう思っているはずなのに、

胸の中は、なんだかモヤモヤする。


ーーー本当に、良かったのか?



あれから何度も頭の中で考えていた。

でも、結局自分はどうしたいのか、

答えは出なかった。




ーーーーーそして、

バレンタインから数日経ったある朝、

西高行きのバス停で、

同じバスを待つかすみに会った。


「おはよ、そういえば噂になってるけど、それ、どしたの?」

赤く腫れた頬を指して、かすみが言った。

「バレンタインの日に、弟に殴られた…」

そう言っただけなのに、

かすみが深刻そうに尋ねてくる。


「なんかあったの?」


「茗子ちゃんに告白された…」

「え?」


「驚くよな…俺も驚いた…」

力なく笑うと、口の端が痛んだ。

「そうじゃなくて。

そこには、今さら驚いてないから。」


「え?」

今度は俺が驚く。


「弟くんも…好きだったんだ、茗子ちゃんのこと」

―――なんで、分かったんだ?

俺まだ咲の気持ちまでは言ってないのに。


「そっ。あいつはもうかなり小さい頃から茗子ちゃんが好きで、よく茗子ちゃんの後付いて歩いてし、小学生になったらさ、わざとイタズラしたりして泣かせたりしてたんだ…」


小さい頃の、茗子と咲を思い出しながら、言うと、


「へぇ」

かすみは、

そこには興味がないというような相槌をする。



「で、茗子ちゃんになんて言ったの?まさか、妹として好きとか言ってないよね?」

かすみの剣幕に押され、何となく言いづらかった。


「ーーー言った…けど?」


すると、かすみが怒ったように言う。

「私がどうして春から離れたか、本当にまだ気付いてないの?」

「?」


「堪えられなかったからだよ、春は私を好きだと言ったけど…本当に好きなのは茗子ちゃんだって、気付いたから。」


「え?何だよそれ…」


「いつまで言い聞かせてるの?“妹”って。」

「………」

かすみのことばに、

だんだん心の中の何かが溶けていく気がした。


「弟くんが怒るのも無理ないわ。茗子ちゃんが好きなのにいつまでも、幼馴染みとか言って!」

「そんなこと…」

ーーーーない、のか?本当に…


「そんなやつに、応援される弟くんがマジ気の毒」

かすみが咲に同情すると、

ちょうど来たバスにさっさと乗り込んだ。




――――“妹”として好き。


その気持ちが、いつから

女の子としての“好き”に変わっていたのか?


自分の気持ちを認めるのが怖かった。


弟の気持ちを先に知っていたから…。

上手くいけば良いと、

最初は本当に応援していたから。



かすみと付き合って、

“好き”という気持ちを知って、

でも、

茗子のことを気にしている自分にも、

気づいていた。


ーーーーでもそれは、

“幼馴染み”だから、だと最初は思ったんだ。


かすみと別れてから、

恋愛をするのが怖くなった。


幸せな時間はずっと続かない…。


“彼女”にして、

もし別れたらと考えるのが怖かった。



“大切で、特別”それ以上に“失いたくない”。


いつからか茗子には、

“妹”として傍にいてもらうことが、

自分には一番だと思っていた。



『南高を受験する』と茗子に聞いたとき、

確かに俺はあの時に、胸の痛みを感じた。


当たり前のように、近くにいて、

近すぎて…気付かなかった。


今になって、

こんなに茗子が好きだと気付いてしまうなんて…。



「かすみ、ありがとな」

バスに乗って、言う。


「本当、元カノに恋バナするなんて、春は残酷だわ」

かすみはわざと怒ったような口調で言うと、

フッと微笑んで

「ちゃんと、気持ち、茗子ちゃんに伝えなよ…春」

と言った。



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