表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いっこの差  作者: 夢呂
【第一章 】
46/283

不意打ち~咲目線~

部活でくたくたに疲れ、家に帰る。

すると、ちょうど家の前に人影が見えた。


「茗子…」

俺の声に、茗子が顔を上げる。

「良かった、待ってたの。おかえり」

茗子が無理して笑った。


―――待ってた?俺を?


「ちょっと、良いかな?」

公園を指差して、茗子が言った。

黙って後についていく。


ベンチに並んで座ると、

茗子が下を向きながら口を開く。

「クリスマス…以来だね」

「あぁ…」

相槌を打つ。

(さく)ちゃん…」

――――また呼び方が元に戻ってるし。

…無自覚だろうけど。

俺は思わず、苦笑いを浮かべる。


―――やっぱりどう足掻いても俺は“弟”か…。


「これ、返すの遅くなってごめんね…」

そう言って、茗子が紙袋を差し出す。

中には、あの日茗子の首に巻いたマフラーが入っていた。

「要らない…これは茗子にあげたやつだから」

俺が紙袋ごとマフラーを返すと、

「私は、自分のマフラー持ってるから…咲ちゃんマフラーして?」

紙袋からマフラーを出して、

ベンチから立ち上がると俺の前に立ち、

フワッと俺の首に巻いてくる。


――――ドキッとして、顔が赤くなっていく。

俺はつい手で口元を押さえる。



「ありがとう」

茗子が静かに言った。

「私を好きでいてくれて」



「私、咲ちゃんの気持ち、すごく分かるから…なかなか顔を合わせづらくて」


「俺のせいで、受験出来なかったんだろ?」

「え?」

驚いたように茗子が俺を見る。

「聞いた、受験、風邪引いて受けれなかった…って」

「それは、咲ちゃんのせいじゃないよ…。そういう運命だったんだよ」

「ごめん…」

―――受験の前日に、あんな困らせることして…。


「謝らないでよ、私も謝らないから」

茗子が言った。


―――それは、あの日の俺が言ったことば…。



「咲ちゃん、私、西高受かったら…ハルくんに気持ちを伝えるよ…」

茗子が静かに、でも力強く言った。



その言葉に、俺は何も言えなかった。

いつか、この日が来るって、分かってたのに。


ただ、黙って立ち尽くすしか出来なかった。


何度も言わなきゃいけないと頭では分かっていたのに…“頑張れ”って。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ