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いっこの差  作者: 夢呂
【第一章 】
43/283

初詣の誘い

「今日は、ありがとう」

菜奈がお礼を言うと、よいお年を…と手を振って帰っていく。


私も手を振って玄関に戻った。



―――初詣か…。

毎年家族で元旦に、歩いてすぐの神社まで行く。

今年は受験もあるし、念入りにお詣りしたい。



―――ハルくん、きっと予定あるよね…?


なんとなく手に持っていた携帯電話に目を落とす。






その日の夜、

お風呂に入って、部屋へ戻ると、

部屋に置いたままだった携帯電話に着信記録が残っていたことに気が付く。


名前を見る前から、ドキドキした。

―――ハルくん、ハルくん……

心の中で念じながら、

指を動かして、着信が来ていた人の名前を見て、

心臓がドキンと大きく鳴った。


――――ウソ……本当に、ハルくんだ。


夢みたいで、手が震える。


チャットも来ていて、

読むと、


『元旦、初詣に行かない?行けたら連絡して』


とだけ、書かれていた。



――――嬉しい、嬉しい…

これは、夢じゃないよね?


短い文章を、何度も読み直す。


これだけで、胸がいっぱいになる。

私はその日、携帯電話を胸に抱きしめて、

眠りについたーーー。




大晦日は、両親と大掃除をして過ごし、

夜には家族で紅白を見て、年越しを待つ。


―――明日から、新しい一年が始まるんだなぁ。

あっという間の一年だったーーー。


そして、明日、

新しい一年を、ハルくんと過ごせるなんて……

なんだか、すごく幸先良い!



その時急にお母さんが私の顔を見て、

「何、茗子、ニヤニヤして」

と言うので、驚く。

「え、ニヤニヤなんて、してないし!」

私が否定しても、お母さんはしつこく言う。

「ムキになっちゃってー、ますます怪しいわね。恋かしら?」

お母さんが私の腕をつつく。

すると、お父さんが突然飲んでいたお茶を派手に噴き出した。

「ちょっと…お父さん、汚ないじゃない―――」

お母さんが慌てて布巾で拭く。


「あ、明日の初詣、何時にしようか、茗子」

お茶が気管に入ったのか、ゴホンゴホン咳込んだ後、お父さんが言う。

「あ、私、初詣はーー」

―――ハルくんと行く。

と言いかけて、恥ずかしくなりことばを切る。


「あら、約束があるのね、まぁ茗子ももう15才だしね…いつまでも私たちと一緒に行くことないわ」

お母さんがにこやかに言う。


「え、茗子……。そんな、まさか…」

いつになく、お父さんが動揺している。



―――ハルくんと行くって、

別に幼馴染みなんだし、

兄妹みたいなものだって両親も思ってるんだから、言っても何もやましいことはないのに、

なぜか言えなかった…。




「あっ!」

――――ふと、ハルくんへ返事を送っていなかったことに気付いて焦る。


私、誘ってもらえたことが嬉しくて…

舞い上がりすぎて、返事返してなかった…。



慌てて携帯電話を手に部屋に戻る。



呼吸を落ち着けて、

チャットの返事を送る。


『返事遅れてごめんね、

明日、一緒に初詣行きたいです!』



すると、

ピロンとチャットの着信音が鳴る。

『良かった!じゃあ明日、朝10時に迎え行くね』

私も震える指ですぐにチャットを返す。

『うん。分かった、じゃあまた明日。おやすみなさい』

すると、またピロンとチャットの着信音。

『おやすみ』


何これ………ドキドキする。

この着信音、なんて心地良く聴こえるんだろう…。

すごく近くにハルくんがいるような、

なんだかすごくくすぐったい。



私は幸せを噛み締めたまま、年明けを待たずに、

眠りについた。





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