迫る元旦
「え、茗子、春先輩から連絡先ゲットしたんだ?!」
私の家で菜奈と受験勉強をしていたはずなのに、
なぜか昨日の話になる。
正確には、
私はハルくんから受け取った携帯番号とアドレスの書かれた紙を菜奈が見つけ、
事の一部始終を問いただされていたのだ。
「で、なんて送ったの?」
興味津々な顔で菜奈が言う。
「……名前と、電話番号…」
「あとは?」
「え、それだけだけど?」
「え、それだけ!?」
菜奈が呆れたように言う。
――――さんざん悩んで、
結局それしか送れなかったんだよ…。
「で、春先輩から返事来たの?」
「うん、“登録した”って」
「え、それだけ!?」
菜奈がさっきと同じリアクションをする…。
「じゃあ、もう会話終了じゃん…」
「うん…」
「つまんないの…、じゃあまた茗子から送りなよー!」
「えっ!?」
「何驚いてるの?連絡したくないの?」
「そんな…用もないのに連絡なんて迷惑だよ…」
「じゃあ、用事を作れば?口実!!」
私の言葉が聞こえてなかったのか、
菜奈は自分のことの様にはしゃいでいる。
「え…」
「明後日の元旦、初詣に誘う、とかさ」
「は、初詣…」
私が戸惑っていると、
「良いなー、私もケイタイ欲しい!!高校合格したら、親がやっと持たせてくれるって言うんだよね~」
携帯電話の話になり、ホッとする。
「頑張って一緒に西高行こうね!!」
「うん」
「って、茗子は余裕か」
私が頑張らなきゃだねと笑いながら菜奈はまた勉強にとりかかる。
私は、鳴るはずのない携帯電話を見て、
ため息をつく。
好きな人と連絡先を交換するだけで、
こんな落ち着かない毎日になるのーー?