表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いっこの差  作者: 夢呂
【第一章 】
41/283

冬休み

あれから風邪が完全に治ったのは三日後で、

学校に行かずにそのまま冬休みに入ってしまった。


先生には、電話で進路変更をお願いした。

私が南高に行くのを期待していたのか、

先生は随分がっかりした様子だった。


私はなんだかこれが、

自分の運命なのではないかと思った。


そう思うと、

やはり南高は行かなくて良かったと思えた。



今日は、ハルくんの家に、

箱菓子を持ってお礼を言いに行くつもりだった。


朝からソワソワしながら、支度をする。



そして、

家を出るとすぐ隣の家のインターホンを押す。


「あら、茗子ちゃん」

おばさんが出て、風邪の心配をしたあと、

気の毒そうに言った。

「南高、受験出来なかったんですってね。茗子ちゃんなら間違いなく行けただろうに…」

「その節は、ご迷惑おかけしました。勝手にお邪魔して…」

私が頭を下げて、箱菓子を手渡すと、

「何言ってるのよ、今さらそんな他人行儀なこと言わないで?私は茗子ちゃんも娘みたいに思ってるんだから…」

おばさんは優しく微笑んだ。


「だからね、茗子ちゃん。困ったことがあったら遠慮しないで?クリスマスの日も、娘とディナーできると思って待ってたんだから!!」

「おばさん…」

おばさんの心遣いに、胸がいっぱいになる。


「ハルくんにも、お礼言いたかったんだけど…今日も部活ですか?」

「そうなのよ!大晦日と、元旦以外は練習ですって」

ー――そっか。

残念のような、ホッとしたような気持ちになる。


「咲もサッカーに夢中で…毎日朝練とか言って、朝早く出掛けて、夜遅くに帰ってくるのよー」

「そうなんですね…」

急にサクの話題になり、

なんとなくぎこちなく相槌を打つと、

私はそそくさと家に帰ってきてしまった。




―――俺も謝らないから、謝らないで。


サクの気持ちはとても切なくて、

胸が痛いから、

考えないようにしていたけど…。



罪悪感でいっぱいになる。




その日の夕方、家にハルくんが来た。

突然の訪問に、

なんの心の準備もしていなかった私は、

顔を見れずにいた。


「風邪大丈夫?」

「うん、おかげさまで…」

「今日わざわざお礼に来てくれたって聞いて」

「あ、うん。本当にハルくん、ありがとう」


「あの時、謝らないといけないことがあってさ…」

――――え?

私は顔をあげると、ハルくんがすまなそうに言った。

「茗子ちゃんの鞄から携帯電話出てきたから、勝手に中見ちゃったんだ…」

「え…!?」

「電話帳…おばさんの職場に電話しなきゃって思って…でも、勝手なことして、本当ごめん」

―――ー電話帳には、

自宅とお母さんの職場、お母さんとお父さんの携帯しか登録されていないので、

私としては、何も困ることは無かった。


「そんなこと、全然気にしないで!!むしろ、電話してくれて、助かったんだし」

私は両手を振りながら言う。


「そっか。そう言ってもらえると助かるよ、俺ずっと罪悪感で…」

ハルくんがホッとしたように笑うと、

私にメモを差し出して、言う。

「俺の番号も、登録してくれる?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ