進路変更
目を開けると、お母さんが心配そうに顔を除き込む。
「茗子…」
あれ、お母さん…?
「気分はどう?」
泣きそうになりながら、お母さんが言う。
「ん…だいぶ良いかも…」
言ってから、ここがハルくんの部屋だと気づく。
え、ってことは、ここはハルくんのベッド…。
体の熱が更に上がった気がした。
ーーーハルくんは?
「ハルくん、私の会社まで連絡してくれたの。今、学校よ…私が無理やり頼んで、行って貰ったわ」
私が部屋を見渡したので、察したように、お母さんが言う。
「……ごめんね、茗子」
お母さんが泣き出した。
「え、お母さん?」
いつも明るいお母さんが泣くので、動揺する。
「お母さんが、出張行かなければ風邪なんて引かなかったのに…」
「全然、お母さんのせいじゃないし」
「茗子……」
「南高は、諦めて、年明けに西高受けるよーー」
そして、私とお母さんは家へと戻った。
次に目が覚めると、夕方だった。
お母さんがキッチンにいる音がする。
ーーーお腹すいた。
ベッドから起き上がると、だいぶ体が楽になっていた。
階段を下りて、リビングへ行くと、
気がついたお母さんが料理の手を止めた。
「寝てなくて、大丈夫?」
「うん、お腹すいちゃって…」
お腹をさすりながら、照れて言う。
「あ、じゃあちょっと待って、お粥作るから」
お母さんが料理をしながら、言う。
「さっき、春くんのお母さんが帰ってきたから、ハルくんから預かってた鍵渡して御礼言ってきたわ。茗子も明日にでもしっかりお礼言ってね」
「うん」
「春くんがバス停にいる茗子に気付いて貰えて、本当良かったわ…まるで王子様ねぇ」
お母さんがうっとりした顔で言う。
―――確かに…
ハルくん居なかったら、私バス停で倒れてたかも…。
ハルくんは、いつも私を助けてくれるけど、
それは、“大事な妹だから”だよね…。
ーーー勘違いしちゃ、ダメだよね…?