受験当日
朝、目覚まし時計の音で目が覚める。
起き上がろうとして、
悪寒がすることに気づく。
「う…」
頭も痛い…。
今日は、南高の受験本番なのにー――。
私は頭を押さえて、セーラー服に着替える。
なにこれ、どんどん寒くなってきた…。
風邪薬を探して、飲むと、
気合で家を出て、
中学とは反対の、バス停のある方向へと歩き出す。
マスクをして、
コートも、ホッカイロも、マフラーも手袋も…
防寒具はすべて使っているのに、
寒気が治まる気配がない。
南高へのバス停は、西高行きのバス停とは、
道を挟んで向かい側になる。
バス停にあるベンチで座っていると、
ガタガタ震えが止まらず、
動くことも出来なくなった。
―――どうしよう。
「茗子ちゃん、大丈夫?」
ハルくんが声をかけてきた。
ー―ーーバス停、逆なのに。
私がそう思ったところで、ハルくんが私を抱えあげる。
おでことおでこをくっつけて、
ハルくんが絶句する…。
すぐに、私を抱えたまま歩き出す。
「―――降ろして…」
ーーーーーバス停が遠くなっていくので、
私は必死に声を出そうとした。
「ばか、こんな熱で、受験どころじゃないだろ!!」
ハルくんに怒鳴られて、私は何も言い返せず、
泣きそうになる。
そうして、ハルくんは家ドアを開けると、
私をそっと降ろし、自分のベッドに寝かせてくれた。
「ハルくん…学校…」
「初めて、サボったわ、俺」
私の問いかけに、ハルくんは笑いながら言う。
「―――受験、できなかった…」
天井を見て、途方にくれる。
もう、試験が始まる時間だ。
「寝たほうが、良いよ…」
優しくおでこに触れて、ハルくんが言うと、
今になって、薬が効いたのか、
私は自然と眠りについたー-ー。