追い込み
南高の受験まであと数日。
なのに、クラスは浮かれモードだ。
目前に迫ったクリスマスに話題がもちきりだった。
「クリスマス…か。」
休み時間、
私が頬杖をついて言うと、菜奈が、
「まぁ、中学最後のクリスマスだしね。」
―――菜奈も、浮かれてる。
甚と約束してるんだろうな…と羨ましく思う。
南高を受験するのは、
クラスで私を含め三人らしいし、
西高はまだ二ヶ月後だからかあまり焦っている人はいない。
「茗子は結局、南高にしたんだよね?頑張って!!」
茗子なら大丈夫だろうけどね、と菜奈が笑う。
その日、家に帰ると、
お母さんがいつものように笑顔で迎えてくれる。
「ただいま」
「おかえり、茗子。そうそう、クリスマスの日なんだけどね…」
お母さんが、仕事で出張が入り、
クリスマスと翌日の受験日に泊まりで地方に行かなくてはならないと聞かされた。
「大事な受験の日に送り出してあげられないなんて…ごめんね茗子」
すまなそうにお母さんが言う。
「大丈夫、仕事頑張って」
「ありがと。受験終わったら盛大にお祝いするから、茗子も頑張ってね」
「うん」
私は頷いて、部屋へと向かう。
―――お父さんはきっとまた帰ってこないだろうし、今年は独りぼっちのクリスマスなんだなぁ。
寂しいけど、仕方ない…と思いながら、
参考書を開くと、
私は勉強に没頭した――――。