志望校
「文化祭シーズンも終わったし、あとは受験に専念かー-」
放課後、私の家で勉強をしていた菜奈が、手を止めて言う。
「そうだね…」
「やっぱ、元気ない。茗子、こないだの西高文化祭から」
「そ、んなことないよ。」
「あの時――――高校生にナンパされてた時、本当ごめんね、うちらがすぐ気付かなかったから」
「もう、良いって。何回も謝りすぎだよ」
笑いながら菜奈を小突く。
「でも、その後からだよね?仲西くんと何かあったの?」
――――菜奈と甚が、
私とはぐれたことに気づいて探しに来てくれたのは、ハルくんがすでに立ち去った後で、
不機嫌な航くんと落ち込む私に何かあったのだと気にしていた。
「ごめん、茗子が話してくれるまで、聞かないでおこうと思ったんだけど…やっぱ元気ないと気になるし…」
「悩んでて、志望校ー-」
咄嗟にそんな言葉が出る。
でも、志望校を決められないでいたのは本当だった。
「あぁ、そういうことか!茗子も西高じゃないの?春先輩いるし。」
「―――南高に、しようかなって」
「えっっ!」
菜奈が目を見開く。
「なんで?」
「ハルくんがいるからって…高校決めるのはどうなんだろうって」
――――どうせ、同じクラスにはなれないし。
「私は、甚と一緒がいいから、西高受験するよ。」
すでにスポーツ推薦で、
甚と航くんは西高を合格していた。
「そりゃあ、私の学力じゃ、大変だけどさ…」
菜奈は自虐気味に笑って言う。
「でも、やるだけ、やってみるよ」
――――菜奈が羨ましいな。
でも、やっぱり私はー-ー。