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いっこの差  作者: 夢呂
【第一章 】
35/283

文化祭での目的

「うわぁ…」

「やっぱ高校は違うな…」

菜奈と甚が西高の正門に着くと、

文化祭のレベルの違いに驚いた声をあげる。



「ここが…」

―――ハルくんの高校。


三人で受付を済ませ歩いて行くと、

色んな看板を持った高校生に声をかけられる。


「二年C組のおばけ屋敷、どう?」

「いやいや、3年A組の、メイド喫茶でしょー」


甚が

「メイド喫茶だって、行ってみようぜ」

とテンション高く言う。

「バカじゃないの…」

菜奈が冷ややかに言う。


人混みの中、そんなやり取りを見ていた私は、

突然誰かに手をとられ、驚く。


―――え、誰?


「あ、ごめんね、今すれ違ったらさ、めっちゃ可愛い子がいたからつい、手出しちゃった」


――――チャラい。


「キミ、どこの高校?俺はここの二年、比嘉(ひが) 涼介(りょうすけ)


「………」

私は手を振り払うと軽蔑の眼差しで見る。


なんなの、この人――――。

自信に満ち溢れた態度…。


この人絶対自分モテると思ってる―――。




「うわ、もしかして俺にらまれてる?初めてかもー」

全然堪えてない…。

てか、流された…?


「んで、名前は?」

顔が近づいてきて、私は後退りする。


―――誰か。


「茗子ちゃん?」

遠くから、私を呼ぶ声がした。

辺りを見回すと、

前から人の間を縫って進んでくる航くんの姿があった。


「良かった…なんか今日雰囲気違うから、人違いかと思った。」

と私を見て、照れたように笑う。


「メイコちゃんって言うんだー」

笑いながら、比嘉さんが言う。

「もしかして、彼氏?どう見ても中学生だけど、え、もしかしてメイコちゃん、中学生?」

その言葉に、比嘉さんの存在に初めて気付いた航くんが、ケンカ腰になる。

「誰だこいつ。」

「おいおい、先輩に対してその言葉遣いはまずいでしょー」

険悪な空気になり、

周囲にもだんだんギャラリーが集まってくる。

私が困っていると、

「ちょっとそこの先輩、何してるんですか?」

ハルくんの声がした。


「お前は…澤野 春……」

ハルくんの姿に、

比嘉さんが黙ってその場から居なくなった。


「ありがとう…ハルくん」


「いや、俺は何もしてないよ、ただの風紀委員」

腕章を見せて笑いながら、ハルくんが言うと、

私の髪に手を伸ばす。


ドキンと胸が鳴った。


「髪、巻いてるの?初めて見た…かわいいね」

――――初めて、巻いたし。

赤面した私がうつ向くと、ハルくんが言う。


「茗子ちゃん、ほら、“友達”待ってるから…」

「あ。」

ハルくんが指差す先に、航くんがいる。

あ、またハルくんのことでイッパイイッパイになってしまった……。


「航くん、さっきはありがとう」

「いや、別に。」

改めてお礼を言うと、航くんが気まずそうに目をそらす。


「こんにちは、澤野春です」

ハルくんが航くんに話しかける。

「どうも、“友達”の、仲西航です」


「やっと会えた…」

ハルくんが航くんをじっと見て言う。


私も航くんも、ハテナ顔で、思わず顔を見合わせた。


「花火大会の“友達”?だろ?」


―――ハルくん、急に何言い出すの?

やっと、薄れかけていた恥ずかしい過ちを、

思い出させられて、その場から逃げ出したくなる。


「泣かせたの、キミ?」

―――え?

「二度と、泣かせたりしないでね。俺の大事な妹なんだから」

笑顔だけどなぜか怒りを感じさせる声色で航くんに言うと、

「じゃあ俺、見回りの仕事あるから。楽しんでいってね」

私に手を振って、言ってしまった。


「…俺、やっぱあいつ嫌いだわ…」

航くんが悔しそうに言う。


「なんか、ごめん」

私は航くんに謝りながら、ハルくんの顔を思い浮かべる。


“大事な妹”――――改めて言われて、

また距離を感じる。



“妹”にしか、見えないんだ…、

いくら背伸びして大人っぽくしてもー-――。

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