西高へ行こう
西高の文化祭の朝、
ふと目を覚ますと、時計を見る。
――――10時か。
昨晩はソワソワして、なかなか寝付けなかったからな。
ベッドから出ると、カレンダーを見る。
今日の日付に書いたハートマーク。
13時に菜奈と甚、
それと航くんとバス停で待ち合わせだから、
まだ時間はあるなー。
ボーッとしながら、
階段を降りてリビングに向かうと、
お父さんの姿があった。
「おはよう」
お母さんも一緒にテレビを見ていたが、
私に気づいて挨拶する。
「お父さん、珍しいね」
あまりに驚いて、おはようを言いそびれる。
「今日は休みなんだ。先週の文化祭、見に行けなくてごめんな。広子に聞いたよ、シンデレラだったんだってな…」
お母さん、話したんだ。
「ここ最近あったことも色々聞いていたよ…。変な奴に襲われそうになったんだって?」
「あぁ…」
あれから菜奈と甚と帰ったりして、
一人で帰ることもなかったし、
もうすっかり忘れていた。
「これ、持っていなさい」
渡されたのは、白い携帯電話だった。
「早いかなーと思って、悩んだんだけど、やっぱり心配だからって、お父さんが」
隣からお母さんが言う。
「何かあれば、連絡してきなさい」
お父さんのことばに、私は頷いた。
―――お父さん、ありがとう。
そして、13時までに間に合うように支度をして、
私は家を出る。
珍しくメイクもして、
髪も巻いてみた。
これで、高校生に、見えるかな?
ハルくんと対等に、見えるかな?
「あ、菜奈…」
「え、茗子!?どしたの?すごい今日大人っぽいー」
バス停に行くと、菜奈と甚がいた。
「気合、入ってるなー」
甚がからかう。
「うるさいなー」
私が恥ずかしくて人をどつくと、
ちょうどバスが来た。
「甚、まだ仲西くん来てないよ」
菜奈がバスに乗ろうとする甚に慌てて言う。
「あ、あいつ、現地集合だって」
「そっか」
それじゃあと、私たちはバスに乗り込んだ。