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いっこの差  作者: 夢呂
【第一章 】
33/283

本番シンデレラ

「いよいよ、今日が本番かー!」

ドレスを身に纏う菜奈が、しみじみと言う。


「菜奈、かわいいー」

私が言うと、

「継母、ですけど?」

菜奈が継母役の時のように、悪者ぶってに声を低くして言う。

そして、お互い笑い合っていると、

斎藤くんが教室に走り込んできた。


「相田…大変だ!!」

肩で息しながら、それでも斎藤くんが続ける。

「シンデレラ役の田中、今日風邪で来れないらしい…」

斎藤くんの言葉に、クラスがざわついた。


「んで、どうすんの?今さら代役って…」

菜奈が斎藤くんに問いかける。


「頭に台詞入ってるやつ、いるのかよ?」

「もう、次、うちのクラスだぞ…」

男子が騒ぎ出す。


私も突然のことに困っていると、

斎藤くんと目が合う。


――――まさか。

嫌な予感を感じた。


「相田、お前…台詞入ってるよな?」

斎藤くんの言葉に、クラスが急に安心したように持ち場につき始める。


「え、でも私、人前とかー-ー」

――――苦手なんだけど。



「大丈夫、なんかあっても、私がフォローするからさ」

菜奈がウインクする。



そして、時間に追われて逆らえず、

気付けばいつの間にか、幕は上がり、

私は急きょシンデレラになった―――――。







「お、終わった…」

幕が下がると同時に、

その場に立ち尽くしていると、

クラスの子達に袖に移動するように促される。


鳴り止まない拍手。


「相田、すごいじゃん」

「頑張ったね、茗子!」

クラスのみんなに言われて、なんだか心が温かくなった。



すると、観客席が騒がしいことに気付いた女子が、

声をあげた。


「え、春先輩、来てる!!」

「ウソ!どこどこ?」

周りの女子がきゃあきゃあと騒ぎ出す。


ハルくんー-ー来てくれたの?

私は途端にうるさくなる心臓を、なんとか鎮めようとした………。




ハルくんは、私の姿を見つけると、まっすぐ歩いてきた。

「茗子ちゃん、良かったよ!シンデレラ役なんて、知らなかったから驚いたけど」

からかうように笑って言う。

―――嬉しい、けど。

「ありがと…実は今日急に代役でやることになって」


――――それより、周りの人達の視線がイタイよ…。


「ドレス、似合ってるね」

ハルくんが笑顔でそう言うと、

赤面した私に気にすることなく、

「あ、そうだ!これ、渡したくて。来週は俺の高校で文化祭だから。“友達”と来て」

手に、チケットらしきものを握らせると、

さっさと帰っていった。


――――ハルくん、一方的すぎ…。

私、ドキドキし過ぎて死にそう。



そのあと、一部始終見ていた周りの女子に、

取り囲まれた。



「茗子、それ西高の文化祭チケット?」

「それがないと外部からは入れないんでしょー?」

「良いなー、ね、それ、良かったら譲って?」

お願いっと言われるけど、

手元には4枚しかないので、全然足りない。


「えっと…」

私が困っていると、チケットが手から消えた。


驚いて振り向くと、

航くんがチケットを持っていた。


「みんな、ごめんねー。これ、俺が甚と菜奈ちゃんと茗子ちゃんと一緒に行くって約束だったんだ」

ねっ、と航くんが菜奈に言うと、

「…あ、うん。そうなの、来年の下見も兼ねて行きたいって言ってたんだよね」

と、菜奈が私に同意を求める。

――――良いのかな?


「うん」

私の返事を聞くと、皆は残念そうに引き下がった。



「仲西くん、ところでどうしたの?甚は?」

菜奈が皆が居なくなると航くんに向き直って問いかける。

「いや、なんか、茗子ちゃんが困ってるように見えて…つい。」

甚は教室で片付けやってるよ、と菜奈に言うと、

「じゃあ私、甚に会ってくるわ」

あとでね、と菜奈がドレスの裾を持ち上げて走って行った。


「着替えてくる…」

教室に戻ろうとすると、航くんが私にチケット返しながら言った。

「迷惑じゃなかったら、本当に一緒に行かない?」




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