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いっこの差  作者: 夢呂
【第一章 】
3/283

先輩

茗子(めいこ)、髪伸びたなー」

休み時間、

菜奈(なな)とクラスの友達と話してるところに、

西原 (じん)が話しかけてきた。


甚は、幼稚園からの腐れ縁。

何でも言い合える唯一の男友達だ。


「伸びたね、そう言われてみれば」

自分の腰まである髪に触れる。

「あ、そうだ、これ、頼まれたんだ。」

甚がこっそり手紙を渡してくる。


「あぁ、また?」

「今度は誰よ?」

菜奈や友達が興味深く見ようとする。


「めいこには、春先輩がいるんだから無駄なのに」

「ハル先輩卒業したから、チャンスとか思ってるんじゃない?めいこ、かわいいから大変だねー!」


口々に言う友達の声を聞こえないふりをして、

甚に手紙を返した。


「要らない」


「いやいやいや、そんなこと言うなよ、頼まれてる俺の身にもなれって」

「言いたいことがあるなら、直接言いに来ればいいじゃん。こんなの」

「言えないだろ、好きな人目の前にっ」

甚がいつになく声を荒げた。

一瞬、

自分の気持ちを言われたのかと思って俯く。



甚は手紙を私の手に握らせると、

席を離れていった。



―――そうだよ、言えないよ…。

ハルくんを目の前にして「好き」だなんて。



幼い頃にお互い「好き」「好き」言ってた記憶がよみがえってまた切なくなる。


無邪気に「好き」って…言えなくなったのはいつ?


彼が、私以外に、「好き」って言ったのは、いつ?





茗子(めいこ)さ、私のこと好き?」

菜奈が帰り際に突然、

変なことを聞いてきたので、私はびっくりした。

「え、うん。」

「好き?」

「え、だから、好きだよ?」

戸惑いながら、言う。

「あー良かった、言えるじゃん、好きって」

「?」

「なんで、言わないのかなーって。ハル先輩に。」

突然ハルくんの名前が出てきて鼓動が高鳴った。


「埋まらないんだよ…」

ざぁぁと風が吹き、木々の揺れる音と同時に、

私の言葉も舞う。


「え?なに?も一回言って!?」

菜奈は当然聞き返した。


「―――ハルくんとはどう頑張ってもさ、年の差が埋まらないじゃん…。」


「めいこ…」


「知ってたんだ。ハルくん、クラスに好きな人いたって。」

―――私は同じクラスになれることなんか、どう頑張っても出来ないけど。


「え?その人って?」


菜奈に聞かれ、名前を言おうとした時、

その人が目の前を歩いてることに気づいたー―ー。


「かすみ先輩?」

菜奈が声をかける。

「あ、菜奈ちゃん」

振り返ってふんわり笑う、この人が…。


ハルくん、好きなんでしょ?





「かすみ先輩、高校どうですか?」

同じ部活だった菜奈とかすみ先輩は、

仲良く話していた。

「確かその制服って、西高ですよね?」

「菜奈ちゃんも来年、待ってるよー!」

「いやぁ、私の頭じゃ、西高はちょっと…」


「大丈夫!!大丈夫!!スポーツ推薦だって、行けるから、私みたいに」

「でも、私。。もうテニスは……」

「え、奈菜ちゃん部活やめたの?」

「はい、ちょっと……」


「あのっ」

気まずそうにする菜奈をかばおうと、

思わずかすみ先輩に声をかける。


「あぁ、ごめんね、茗子(めいこ)ちゃんだよね?」

「はい…」

どうして名前を…?


「知ってるよー、春の幼なじみでしょ?有名だったもんね、かわいい幼なじみがいるって」


ハルくんのことを呼び捨てで呼ばないで…。



「菜奈ちゃんと仲良しなんだね。私、今年も春と同じクラスだったのよ。なんかもう、腐れ縁ね。」


「………」

何も言えず、

先輩と菜奈と別れて帰り道を一人歩く。




家の近くで、

春くんとばったり会った。


茗子(めいこ)ちゃん、今帰り?」

いつものあったかい笑顔。

泣きそうになるんだってば、

ハルくんの顔見るとー―ー。


「ここ最近ちゃんと話したことなかったけどさ、茗子ちゃん、俺のこと避けてるよね?なんで?」


「っえ!!?」


「俺、なんかしたかなって…」

「ううん、違うよ、そんなんじゃないよ」

「変な噂とかもあったから、迷惑かけてたしさ」

「変な噂?」

「ほら、俺の彼女。。みたいなさ」

「へっ」

驚き過ぎて変な声が出た。

「本当ごめんな、彼氏作れなかったの俺のせいだよな…茗子ちゃんこんなかわいいのにさ」


ハルくん、それはひどいよ………。

なんでハルくんが「彼氏(他の男)」の話するの?


「朝とか帰りに一緒に帰ったりしてたからだよな~って。俺は否定してたんだけど、周りの奴らが勝手にさ…」

「分かってるよ」

私の口が勝手に動き出した。

もうこれ以上聞きたくなかった。

「ハルくんも、彼女出来なくて大変だったよね?ごめんね、なんか…」

「茗子ちゃん?」

「なんか、ごめん……。」


泣くな。

ここで泣いたら…絶対バレる。


声が震えないように、ちょっと間を置いてから、

「高校では、彼女出来ると良いね」

笑顔で言った。


「ありがとう…」

ハルくんも笑顔でこたえた。

「でも、茗子ちゃんが彼氏連れてたら、俺ショックだな…なんか妹とられたみたいで。」

頭をポンと撫でて、ハルくんが言った。




分かってるよ…ハルくんにとっては妹だって。

ずっと変わらないって。


「彼氏出来たら紹介するよ」

ふざけて言った。


彼氏なんて、出来るわけないのに―――。

















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