謝罪と嫉妬
「では、三年は各クラス一つ、何をやるか決めて来週までに提出してください。では、今日はこれで解散で!」
委員長の航くんの声が
文化祭実行委員の集まる教室に響き渡る。
うちの中学では、
毎年、
一年生は、見回り掃除。
二年生は、PTAのおばさん達と模擬店。
そして、
三年生は、英語劇をやることになっている。
「とりあえず、明日クラスで話し合いすっか」
隣の席で、斎藤くんが伸びをしながら言う。
「うん…」
私が頷いて、席を立つと、
「茗子ちゃん、今日このあと時間ある?」
航くんが私のもとへとやってきた。
「?どうしたの?」
「ちょっと、数学で分かんない問題があって、教えてほしいんだけど、ダメ?」
「私で分かる問題だったら…」
「良かった、ちょっとじゃあ今持ってくるから、ここで待ってて」
「分かった」
私が言うと、ホッとしたような笑顔で航くんが教室から走って出ていく。
「付き合ってないらしいよな…仲よさそうだけど?」
隣でやり取りを見ていた斎藤くんが面白くなさそうに言う。
「友達、だから」
「へぇ、友達ね…」
納得いかなそうに呟くと、
教室を出ていこうとする。
なんだか胸の中がモヤモヤして、
「なんで、そんな突っかかった言い方するの?」
斎藤くんに問いかけていた。
「別に突っかかった言い方なんてしてないだろ」
振り返りながら斎藤くんが言う。
「そうかな?」
「そうだよ、なんだよ、まだ中一の時のこと、怒ってるのかよ」
「………怒ってないよ」
ーーかなしかった、だけで。
すると、斎藤くんが声のトーンを落として話し出す。
「賭け、って展開になるなんて、思ってなかった。それに、まさかお前の耳にまで届くなんて思ってなかったし。言い訳だけど、でも俺は本当に好きだったし、相田も俺のこと好きなんだと思って…」
「!!?」
「調子にのっちゃったんだ…本当ごめん。悪かったよ…」
「今さら…」
二年になって、クラスが離れてから、
私は斎藤くんから呼び出され、告白された。
その頃には私は、
何度か話をしただけのクラスの男子から告白されたり、話したこともない人からも告白されたりして、
男子と仲良くなろうとも思わなくなってたし、
告白されても、不信感と不快感しか抱けなくなっていた。
その時にも、きっぱり断っていたし、
もう話すこともないと思っていたのに。
「お待たせ……」
航くんが、問題集を手に走って戻ってくると、
斎藤くんは、そのまま帰っていった。
「大丈夫だった?」
航くんが私の顔を覗き込む。
「え?」
「なんか、緊迫した空気だった気がして…」
「全然、そんなこと、ないよ。それより、どれ?」
話をそらしたくて、問題集を開こうと、尋ねる。
「ーーーこれ、ここの問題が途中から分からなくなって」
航くんが、少しの間をごまかすように、話し出す。