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いっこの差  作者: 夢呂
【第一章 】
21/283

斎藤くん

「なんで雅臣(まさおみ)くん、立候補したのー?」

昼休みが終わるぐらいに、教室へと戻ろうとすると、

斎藤くんが、ドア近くの席で女子に囲まれていた。

口々に不満をぶつけている。

私は入りにくくて、ドアの前で立ち止まった。




「まさか、まだあの悪女のこと好きなの?」

「だまされてるんだよ、まさくん!」

「そうだよ、仲西くんみたいに遊ばれて捨てられるって」


すると、黙っていた斎藤くんが、うんざりしたような声で言う。

「あのさぁ、俺、自分の意思で立候補したんだよね。それに、クラスの女子からヒトの悪口とか聞くと、気分悪いんだけど」

彼のことばに女子は黙り込む。

「だいだい、その噂って私立中の女子が言いふらしてたやつだろ、俺も聞いたから知ってる。でもさ、なんで知らない女の子の話信じるの?友達(めいこ)に確かめもしないで…」


「確かに…」

他の男子も、斎藤くんの言葉に納得する。


女子たちもそれ以上、何も言わなかった。


「あれ?茗子、入らないの?授業始まるよ?」

甚のクラスから戻った菜奈が私に言う。

「あ、うん」

ドアを開けて足を踏み入れる。


ちょうど午後の授業の開始のチャイムが鳴り、

皆が席につく。


私はチラッと斎藤くんを見た。

斎藤くんも私の方を見ていて、目が合う。


ーーーやば。

すぐに目をそらすと、私も席に着いた。



ーーーー中一の時に同じクラスだった斎藤くん。

入学からしばらく経って、

休んだ子の代わりに日直当番を引き受けた日に、

彼と初めてことばを交わした。


「あれ?日直の代わりって相田(あいだ)なの?」

「うん、先生に頼まれて」

「え、大変だね、こないだ順番回ってきたばっかりだろ?」

「その分、今度は今日休んだ相馬(そうま)さんがまってくれるから、大丈夫」

「へぇ」


何気ないこんな会話からはじまり、

それから、

毎日話し掛けられるようになった。

特に長話をするわけでもなく、

朝会えば挨拶したり、宿題について話したり。


話すことが苦手な私は、

自分から動けなかったから、

友達として仲良くしてくれて、

クラスに馴染めたのも斎藤くんのお陰だと思っていた。


彼の誰にでも接することができる明るさは眩しかったし、

彼の周りには友達がたくさんいて、

羨ましくもあった。




中一のバレンタインデーの前日、

あの日に斎藤くんの本音を聞いてしまうまでは、友達だと、思っていたのにーーーー。



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