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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
200/283

謝罪

「本当にすみませんでしたっ」

翌朝、なぜか斎藤くんに頭を下げられる。



「え…」

「おかしいと思ってたんだよな…幽霊部員の耀太が、珍しく合宿やりたいとか言うから」

マネージャーの斎藤くんが独り言のようにブツブツ文句を言う。


「耀太が相田さん目当てだったなんて…全く気づかなくてすみません本当…」


「――いえ、私は大丈夫ですから」

―――牧野くんから何か聞いたのかな?


「でもあいつ、なんかしませんでした?」

でも、昨日何があったのかは知らないようだった。


「…はい…」

私は、少し悩んでから頷いた。


「それなら…いいですけど」

「こちらこそ、須賀高校のみなさんにはたくさんお世話になりました…」


「―――次は、インターハイで会いましょう」

「はい」

斎藤くんに笑顔で言われ、私も笑顔で頷く。





「茗子、昨日春と何してた?」

帰りのバスでずっと黙っていたサクちゃんが家の近くまで歩いて来たところで口を開く。

「え…?」


――――ハルくんと…?


私は、昨日のことを思い出してみた。

―――牧野くんに迫られて…怖くて…。

ハルくんが来てくれて、それで…。


あれ?私…自分からハルくんに抱きついた…かも…。

思い出してから、真っ青になる。


――――私、ハルくんと…抱き合ってた…?

それが心地よくて…無意識に落ち着きを取り戻して…。


「やっぱり春のことまだ好きなんだ?」

「……そんなこと、ないよ」

でも、サクちゃんの顔をみることができない。


「じゃあなんで抱き合ってたんだよ」

「サクちゃん…」



「茗子、襲われたんだよ、牧野に」

ふいに、後ろからハルくんの声がした。

「ハルくん…」

私が振り返るとハルくんが傷ついたような顔で微笑んで言った。

「ごめん、――今の会話聞いてた」

―――ずっと後ろに…?



「粟野が俺を呼んだんだ…牧野に襲われて茗子が泣いてるって」

「なんで春を、彼氏は俺なのに―――」

サクちゃんの苛立ちをハルくんが制するように言う。

「俺の方がたまたま近くにいたからだろ、その時」


ハルくんがサクちゃんの肩に手を置いて言う。

「茗子が震えてたから、しばらく落ち着くまで側にいただけだよ。咲、そんなことイチイチ気にすんなよ」

ハルくんの言葉に、サクちゃんがハルくんの胸ぐらを掴む。

「気にするだろ(おまえ)がそんなだから」

――――?サクちゃん?


「サクちゃん、やめて。私が好きなのはサクちゃんだよ?」

私が胸ぐらを掴んだサクちゃんの手にそっと触れながら言う。

「そのかばわれ方は嬉しくないな…」

ハルくんがバッとサクちゃんの手を振り払うと、

素早く先に家に入っていった。


―――え…?今のはどういう意味?


私は、ハルくんの玄関を見ながらズキッと痛んだ胸を押さえる。

「茗子、家行っても良い?」

―――サクちゃんが言った。

「…うん」

私も応える。


私の家に入ると、

後ろ手でドアを閉めながらサクちゃんに抱き締められる。


「茗子…どこにも行かないで」

弱々しく囁くサクちゃんの声…。


何に対して感じているの…この罪悪感は…。


いや、気づいてる…本当はずっと前からー―…。



「サクちゃん、ごめんね…」

ごめん、ごめん――――……。


何回謝っても、謝り足りないよね…。




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