表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いっこの差  作者: 夢呂
【第一章 】
20/283

文化祭

夏休みが終わり、登校日。


「おはよ」

教室に入ると、なんだか異様な空気に気付いた。


何となく、女子の視線が痛い。


「おはよ、茗子」

菜奈が後ろから教室に入ってくる。


みんながヒソヒソ話してるのが、

聞こえてくる。

ーーーわざと聞こえるように話しているようにも思えた。


「茗子、隣のクラスの仲西くんとキスしてたらしいよ」

「サッカーの試合にも、応援来てたらしいし、」

「なのに、付き合ってないんだってひどくない?」

「仲西くんカワイソー。いくらなんでも悪女過ぎだよ」

「春先輩を一途に想ってるのかと思って、気にしないようにしてたのに、」

「イケメンキラーなんじゃない?」



「茗子……気にしないで。皆も徐々に分かってくれるよ」

「うん…」

事情を知る菜奈が、私を慰めてくれる。



悪口言われても仕方ない、

だって私が優柔不断だったせいで、

(こう)くんに変に期待させてしまったのは事実だから。




担任の先生が教室に入ってきて、

みんなが大人しく席につく。


「夏休みも終わって、いよいよ、受験まであと少し!皆、気を引きしめろよ!!」


「だけど、最後のイベント、文化祭がある。誰か実行委員に立候補して!」


“文化祭”の言葉に、皆が騒ぎ出す。


そのうち、クラスの誰かが言った。

相田(あいだ)さんが良いと思いますー」


ーーーえ、私?

クラスで拍手がおこる。


悪意にしか感じなかったけど、

断れる空気ではなかった。


「相田、どうだ?やるか?」

先生に聞かれ、

「はい…」

と答える。


「じゃああとは男子!!立候補いないなら推薦でもいいからーーーー」

先生のことばを遮るように、声があがる。

「はい、やります」

「俺も!」

男子が数人名乗り出て、じゃんけんで決める。


じゃんけんで勝ったのは、

斎藤 雅臣(まさおみ)くん、と言うお調子者で、

クラスでも人気の男の子だった。


「っしゃぁ!」

わざとらしく、ガッツポーズしている。


ーーー関わりたくないなぁ。


私はため息をついて、窓の外を見る。




「茗子もツイてないね、まさかこの状況の時に、よりによって斎藤と組まされるなんて」

お昼に中庭のベンチに座って、

お弁当を広げながら菜奈が言った。

「斎藤はうちのクラスの女子にも好きな子いるし。またこれで女子との溝が広がったね…」

「あぁー…めんどくさいよ…菜奈…」


「私は茗子の味方だから!!」

菜奈が言うと、

「俺達も、味方だから!!」

後ろから声がして、振り向くと、甚と(こう)くんが立っていた。


「うちのクラスでも、すげぇ広まってたよ。茗子の悪女話」

からかうように甚が笑う。

「なんか、ごめん…俺のせいで」

航くんは深刻そうに謝る。


「謝ることなんてないでしょ」

菜奈がかばうように言う、

「仲西くんは悪くないし」


「むしろ、かわいそうなイケメンだよな、今や」

甚がからかう。

「うるせぇよ!!」

航くんが言い返す。


「でも茗子、気まずいんじゃね?あいつ、中一の時

仲良かったよな?」

「そして、告られてたよね」

「え、マジかよ…」

菜奈と甚のことばに、航くんが絶句する。


「だから助けてやれよー、航。お前、実行委員長なんだから」

甚が航くんをどつく。


「まぁ、なんかあったら、相談して。頼りにならないかもしれないけど」

自虐的に航くんが言う。


ーーー優しいな、本当に。


「ありがとう…」

私は少しだけ元気を取り戻した。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ