表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
198/283

罠~咲目線~

「なんで一年は基礎練ばっかなんだよ…」

俺はイライラを吐き出すように言う。


二年と三年は、須賀高と練習試合だってのに…。


「確かになぁ」

同じクラスでもある武田(たけだ) (まもる)が言う。


「でも、あの須賀高相手じゃ、俺達が出れるわけないだろ」

将太(しょうた)が言う。

「相手はインターハイ準優勝校だぞ?」

史也(ふみや)も、言う。


――――お前らスポーツ推薦だろ…なんでそんな弱気なんだよ…。



「でも、基礎練習って言ってもこの外周って…」

護が口を開いたとき、

「おい、そこ!!しゃべってんな!あと10周追加だ」

顧問に怒鳴られる…。


―――くっそ…。


俺は一人走るスピードをあげる。

昨日の夜のことがなかなか頭から離れない。



昨日の夜、

マネージャーの粟野に『茗子が部屋で待ってる』と言われ、

部屋に向かった。


茗子が部屋に呼び出すなんて…ドギドキしながら向かう。


ノックしても返事がない。

「茗子?」

声をかけるとドアが開いた。


ドアを開けて入ると、ギュッと後ろから抱き締められる。


――――茗子?


「サクちゃん…」

俺を呼ぶ声…でも…。


違和感を感じてガバッと後ろを振り返ると、

そこに居たのは粟野だった。


「なんで、粟野…」

俺が驚いていると、

「私が頼まれたんです、茗子先輩に」

粟野が言う。

「澤野くんを、ここに引き留めておいてくれって」



「は?」

――――茗子がそんなこと言うわけねーだろ。


「どけよ」

ドアの前に立ちはだかる粟野を乱暴にどけると、

「キャ…」

よろけて床に膝をつく。


――――気にも留めずに茗子を探しに部屋を出る。



「ちょっと待って澤野くん…」

粟野が後を追いかけてくる。


「茗子先輩、今頃澤野先輩と…」

「ついて来んなよ…」



―――どこだよ、茗子…。

こんな時間にどこ行ってんだよ…。


焦りと苛立ちで、落ち着かない…。



――――春と会ってるなんて、嘘だ。

嘘に決まってるのに…、くそ…。



裏庭に居る気がして急いで向かう。

「茗子、居るのか?」


――――でも…見つからなかった…。

「どこ行ったんだよ…」

俺の心の声が漏れる…。




ホールに戻る途中、何度も茗子に電話した…でも茗子は出なかった。

そして寝場所(ホール)に戻ると、春の姿はなかった。


――――嘘に決まってる…。


「春は?」

寛人に聞くと、寛人が周りを見渡して言う。

「あ…あれ?春そういやさっきから見てないな…トイレじゃね?」




――――そして今朝、

茗子にどこにいたのか聞いたとき、茗子もトイレと言った…。


偶然だろ…、そんなことイチイチ気にしてどうする?




「あ、おいっ」

「咲っ、お前もう10周走り終わってるぞ!おいっ」



暫くして、周りに体を張って止められるまで、

俺は気付かずに外周を続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ