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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
197/283

試される

「おはよ、凛ちゃん」

「おはようございます…」


昨日はおそるおそる部屋に戻ると、

凛ちゃんはすでに布団を頭までかぶって寝ていたので、

何も聞けなかった。


「凛ちゃん昨日は…」

「フラれましたよ、あっさりハッキリ」

私が聞くより早く、凛ちゃんが答えた。


「約束ですから、私もう諦めます。」

「凛ちゃん…」


「私…春先輩にしますね」

「え?」

「正直、茗子先輩には敵わないなって思ってたので、良かったてすよ」


「今日から私、春先輩狙いますから!それなら茗子先輩も協力してくださいますよね?」


凛ちゃんが、試すような目で私を見ている。


「それは…」

口ごもってしまった私の顔を覗き込むと凛ちゃんが言った。

「ハッキリしてください!春先輩なのか、咲くんなのか。

先輩が好きなのは、どっちなんですかっ!?」



「それは………サクちゃんだよ…」

私の声が、小さくなる。

「なら、協力してくださいますよね?」

凛ちゃんが迫るように言う。


「…うん」

私が頷くと、

満足そうに笑顔で凛ちゃんが先に部屋を出ていく。


私はため息をついて、重い足取りで部屋を出た。



「おはよ、茗子」

食堂に着くとサクちゃんが私を待っていた。

「おはよう…」

私は、なんとなく目をそらしてしまう。



「昨日の夜、どこ行ってた?」

サクちゃんが私に聞く。

「え、何で?」

私が動揺を隠しながら聞き返す。


「部屋に居なかったから」

「と、トイレだよ…。」

私が目を合わせずに言うと、

「ふーん…」

納得しきれてないような声で、サクちゃんが言った。

「春と会ってたのかと思った」

「え、そんなわけないよ」

私が言うと、サクちゃんはそれ以上何も言わなかった。





「相田さん、今日の練習試合、俺が勝ったらほっぺにチューしてよ」

須賀高と二年三年だけの練習試合を始める直前、突然牧野くんが私に囁いた。

「な、何言ってるんですかっ?」

私が耳を押さえて赤くなりながら、後ずさると、

「赤くなっちゃって、可愛いなー」

私の反応を面白がりながら、牧野くんが近付いてくる。


「こんな可愛いと、確かに欲しくなるわぁ」

―――牧野くんって、なんか比嘉先輩みたい…。チャラいというか…苦手なタイプ。


「澤野兄弟の気持ち、分かるな」

私のポニーテールの髪に触れながらボソッと言う。


「触んな」

ハルくんが私の前に立つと言った。


「うわ、元カレ怒らせちゃった?怖っ。」

牧野くんがからかうように言うと、チームの中に戻っていった。



「ハルくん、ありがとう」


「相変わらず、隙だらけだな…」

ため息をついて、ハルくんが言う。


「咲が居なかったから良かったけど、牧野には気を付けろよ。」

「…うん」

――――ハルくんの言葉が、付き合っていた頃と変わらなくて…錯覚してしまいそうになる。


もう“彼女”じゃないのに…

まだハルくんの“彼女”なんじゃないかとー――――。






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