彼女になりたい
「勉強?」
「うん」
中間テストが近くなったある日の帰り、
サクちゃんが私に相談があると言った。
「茗子に教えて欲しいんだよ、勉強!」
「サクちゃん…頭良いんだから私なんか役に立たないと思うけど?」
――――下心があるんじゃないかと、私はサクちゃんをじーと見つめた。
「俺、別に頭良くないって。受験の時は、落ちたらどうしようって必死にやったから、出来ただけで」
「どんだけ必死だったのよ」
私が笑って言うと、
「すげー必死だったよ?絶対西高に行きたかったから」
サクちゃんが真剣な顔で言う。
――――そんな表情で言われてると…
まるで私と同じ高校に行きたかったからって聞こえるんだけど…。
「お邪魔しまーす」
私が赤くなっているうちに、サクちゃんが家にあがりこむ。
「で、何が苦手なの?」
私の部屋に入って、私が聞く。
「数学」
「―――嘘でしょ」
――――サクちゃん、こないだ数学得意って言ってたよね?
「いいから、教えろよ。ほら、ここから!」
強引に言われて、問題集に目をやる。
「あぁ、これ…去年テストに似た問題出てたよ。これはね………」
説明しながら、チラッとサクちゃんに目をやると、
サクちゃんが頬杖をついたまま、じっと私を見つめていた。
「ちょっと!聞いてる?私が今一生懸命説明して…」
ドキッとしながらも、私は怒ったふりをしてサクちゃんに言うと、
「――聞いてたよ」
幸せそうに微笑んで、サクちゃんが言う。
―――やめて、そんな表情で見ないで…。
急に、いま家に二人きりだということを意識して固まってしまう。
「俺、茗子の部屋…クリスマスの時以来だな」
サクちゃんが、突然そんなことを言い出す。
ー――そういえば…
「あの時、部屋まで運んでくれてありがとう。サクちゃんだよね?」
ずっとお礼を言ってなかったことを思い出す。
――――あの日、間違えてお酒を飲んでしまって、泣きながら寝てしまった、恥ずかしい記憶が蘇る。
「本当、重かったわ…」
サクちゃんが意地悪な顔で言う。
「ひどい!」
「バカ、嘘だよ。」
「女の子にそんなひどいこと、嘘でも言っちゃダメ!」
私がサクちゃんに説教すると、
突然サクちゃんが私を持ち上げた。
「え、ちょっと…」
―――今度はナニ?
そのままドサッとベッドに降ろされ、そのまま覆い被さるようにサクちゃんが仰向けの私を見下ろしていた。
「茗子が可愛くて、我慢できねー」
「は?」
「食べてもいい?」
「な、何言ってるの?」
冗談でしょ…と笑ってみたけど、
サクちゃんの目は真剣で…私はごくりと唾を飲み込む。
「――――っ」
何度もキスをした後、
首筋にサクちゃんの舌が這う。
「んっ…」
ゾクゾクして、私の身体が震えた。
自然と甘い吐息が漏れる。
―――サクちゃん……。
サクちゃんのこと、好きになりたい。
私はサクちゃんに触れられながら、思った。
服を脱がされ、下着姿のままサクちゃんに見下ろされる。
「茗子、ごめん…」
私に布団をかけながら、サクちゃんが言った。
「なんで謝るの?」
――――私はサクちゃんに抱かれても良いって思ったのに…。
サクちゃんは、黙って、私の頬に手を伸ばす。
―――私の目から涙が流れて頬をつたっていた。
「あれ…?」
おかしいな…私、泣いてる?
「サクちゃん…続けて?」
「え…でも茗子、無理してるだろ」
「そんなことないよ…?」
――――ちゃんと、サクちゃんの彼女になりたいの。
決めたから、努力しようって。
私は涙を拭いながら、微笑むと、
サクちゃんが、キスをしながら私の胸に手を伸ばす。
「あ…んっ」
大丈夫…無理なんてしてないよ…?
サクちゃんに優しく愛撫され、喘ぐ。
私とサクちゃんは、その日結ばれた―――。
「茗子、大丈夫?」
サクちゃんが私のベッドに横たわったまま、
私の髪を優しく撫でる。
「ごめん、最後まで優しく出来なくて…」
何度もイカされたのが初めてで、
泣いてしまった私のことを気にしてくれていた。
「…ううん。気にしないで」
恥ずかしくて、サクちゃんに背を向けると、
後ろから抱き締められた。
「夢みたいだ…こうして茗子が腕の中にいるなんて…」
耳元でサクちゃんが囁く。
――――これで、良かったんだ。これで…。
サクちゃんの腕にそっと手を添えて、私は自分に言い聞かせる。
「やべ、おばさん帰ってくる前に帰らねーと」
時計を見て、咲ちゃんが言う。
「今日は…帰ってこないんだ…。出張なの」
私が言うと、サクちゃんが言った。
「じゃあ…も一回してもいい?」