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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
189/283

仲直りしても

バスケの試合は、準々決勝までいったが、

三年生に惜しくも一点差で負けてしまった。


「あーくやしい!」

愛梨が言いながら、私と体育館を出ようとした時、


「茗子、ちょっと良い?」

ハルくんが私の前に現れた。


『茗子は、春先輩のこと、まだ好きだと思うよ?』


さっき菜奈に言われたことを思い出す。


『茗子は、春先輩の、何を見てきたの?』





「ごめん…」

ハルくんがバスケ部の部室に入ってドアを閉めると、

頭を下げた。

「俺、ちゃんと仲直りしたくて、茗子と」

――――ハルくん…。


「修学旅行の時のこと、本当にごめんな…。茗子の気持ち、一番に考えるべきなのに…」

「…うん…」

―――他の女の子にキスなんて…、ひどいよ…。

不本意だったとしても…。


「この間も、比嘉先輩とのことで嫉妬して…ひどいこと言ってごめん…今更、許してもらえると思ってないけど…」

「………」

「俺、ダメなんだよ…茗子のことになると余裕なくて…。」

苦笑いでハルくんが言う。

「―――だから、これで良かったと思う…」

「え?」

ハルくんの言葉に、私は顔を上げる。


「茗子が、咲と付き合うようになって」

「え…」

ハルくんの言葉に、耳を疑った。


「咲なら、きっと茗子のことを一番に考える。誰よりも」

「ハルくんがそんなこと、言わないで…」

――――私は…ハルくんの一番に…なりたかったのに。


「ごめん…でも俺は茗子のこと好きだよ、ずっと…」

「え…」

――――ハルくん?


「前みたいには、一緒にいることは出来ないけど…避けるのだけはやめて?」

泣きそうな顔でハルくんが優しく言う。

「茗子に嫌われるのが、一番堪(こた)えるんだ…」


―――嫌ってなんかないよ…。私、本当は…。



「…私、本当はサクちゃんと付き合ってないよ」

「――――え?」

「私が…好きなのは…今でもずっとハルくんだから」


私は…後悔しないように思い切って、告白した。

菜奈の言う通り…私はハルくんが、好きだ。

自分が傷付きたくないから、逃げていただけで―――。


「修学旅行でのことがショックで…比嘉先輩とのこと疑われて責められたのが悲しくて…逃げてた。私も、ハルくんが好きだから…嫌われたくない…。」


「茗子…」

涙が出そうになるのを必死で抑えて伝えると、

ハルくんが優しく抱き締めてくれた。


―――懐かしい…ハルくんの温もり。



私も、ハルくんを抱き締め返す。





「ありがとう、そんな(ふう)に言ってくれて」

ハルくんが腕を緩めて私の顔を見て微笑む。


「ハルくん…」

顔が近付いて、キスされる気がしてドキドキしながらハルくんを見つめた。


――――でも、キスの代わりに、ハルくんが言った…。


「でも、俺は茗子とやり直すつもりはないんだ…」

ハルくんが困ったような顔で微笑む。


「え…」

私は心が凍りついた気がした。


―――仲直り、出来たんだよね?

私の気持ち、ハルくんに届いた…よね?


「ごめんな…」

そう言うと、ハルくんが部室を出ていった。



――――どうして?……どうして?どうして?


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