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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
186/283

叶わない夢~咲目線~

「……ダメ?」

俺が答えを聞く。

「ダメだよ…」

茗子がこちらを見ないまま、困ったように即答する。


―――そりゃそうだよな…。キスなんて、俺のこと好きでもないのに。

俺が諦めてそっと手を離すと、茗子は逃げるようにダッシュで行ってしまった。


「おい」

茗子の背中を、切ない気持ちで眺めていると、

後ろから声をかけられて振り返る。


そこには、仲西と、俺と同じクラスの笹井杏奈がくっついていた。


「なんだよ、さっきの」

仲西が苛ついた口調で言う。

「…別に、先輩には関係ないだろ」

俺は仲西を睨んで答える。

―――お前はもう、茗子のこと、諦めたんだろ?


「まぁ、もう、関係ないかもしれない…けど。」

「じゃあ口出ししないでよ、先輩」

俺がサッカー場に戻ろうと背を向けて歩き出す。


「俺はなぁ…お前の才能が羨ましいんだよ!!」

「はっ?」

仲西の言葉に、つい振り返ってしまう。

―――才能?なに言ってんだ…?


「あんな手加減して…もっと本気出せよ!!失礼だろ、相手に!」

――――こいつ、サッカーのこと言ってたのか。

俺はてっきり茗子のことかと…。


「なんだよ。なに笑ってんだよ」

仲西が怒ったように言う。

「別に?」

俺が笑いをこらえて言う。


「―――澤野、お前サッカー部入れよ」

仲西が真剣な顔で言う。

「………」

「勿体ないだろ、その才能。」

「―――まぁ助っ人なら、してもいいスけど?」

「本当ムカつく奴だな」

俺の言葉に、仲西が苦笑いで言った。



「ねぇ航先輩、バスケの試合始まるんじゃないですか?」

さっきから、仲西の腕に引っ付いてた笹井杏奈が言う。

「あ、やっべ」

仲西が体育館に向かおうと走り出す。

「ちょっと、航先輩待ってよー」

笹井杏奈も後を追いかける。


―――あれ?仲西と茗子、同じクラスだったよな…。

茗子、バスケって…あいつと一緒のチームか!?


俺もすぐに体育館に向かう。



2年A組と2年B組の試合が始まった。

茗子は、ポニーテールに髪を縛っていた。

いつもは、髪を縛っていないからかすごく新鮮で可愛かった。


「うわ、澤野くんも来たんだ」

俺が茗子を目で追っていると、

いつのまにか隣に笹井杏奈が立っていた。

「ちょっと、シカトしないでよね」


「さっきと声のトーン違いすぎ」

俺がボソッと言う。

―――典型的なぶりっこだな…。


「うっさいわ。それよりあんた、絶対別れないでよね!!」

――――キャラ違いすぎだろ…。


「お前に関係ないだろ」

―――三ヶ月限定なんだよ。三ヶ月過ぎたら…終わりなんだよ。

―――茗子が俺に全く脈なしだってこと承知で頼んだことなんだ…、別れる前提の付き合いなんだよ…。


「相田先輩がフリーになると、航先輩の気持ち、相田先輩に戻っちゃうんだから…」

笹井杏奈が、切ない顔で言う。

「なんだよ、それ」


茗子のシュートが届かず、ボールをとられそうになったところに、仲西がすばやくボールを取り、ドリブルシュートを決めた。

仲西と茗子が嬉しそうにハイタッチをする。


―――そんな様子を見ながら、笹井杏奈と俺は話を続ける。


「必死なんだよ、あたし。ここで繋ぎ止めて、航先輩のことちゃんと振り向かせたいの!今の航先輩…無理してるの分かるもん…」

「確かに」

―――無理してるのは、見れば分かる。

今、すごく嬉しそうにしているのも…。



「納得すんな!!―――こっちはね、もう4年も片想いしてんのよ」

笹井杏奈が力説する。

「へー…」

――――俺は…小学生の頃からずっとだけどな。


目の前で、下手くそなりに頑張ってる茗子を見つめながら、

小学校時代を思い出す。



―――ずっと、手に入らない存在(ひと)だって、思ってた。


茗子(かのじょ)の目の中にはいつだって、(あに)しか映って居なかったから。


約束は三ヶ月、………あと残り二ヶ月だけど、

“俺の彼女”になってもらえる日が来るなんて、思わなかった。


このままずっと、俺の彼女(もの)だったら良いのに…。



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