凛ちゃん
「茗子先輩…どういうことですか?」
部活に顔を出すと、凛ちゃんに壁ドンされる。
「凛ちゃん…落ち着いて…」
「茗子先輩、言いましたよね、ただの幼馴染みって」
顔が近くて、キスされそうな距離。
いつもおとなしい凛ちゃんが、まるで別人だ…。
「ごめん、その…色々あって…」
あまりに顔が近くて、目をそらして言う。
「なんですか、色々って」
「うーんと…それはちょっと…」
「私、茗子先輩のこと、信じてたのに…」
「ごめんね…」
――――一年生の中でも一番の気がかりは凛ちゃんだった。
凛ちゃんはサクちゃんにアプローチしてる訳ではないからサクちゃんは気付いていないし。
この間聞かれたとき、
ただの幼馴染みって言ってしまったから、
不信感を抱くだろうと思ってはいたけど…、
まさかここまで怒るとは…。
「負けません、私。奪いますから」
すごい勢いで言われる。
「えっと…うん」
私が苦笑いで言うと、
「何ですか、もしかしてバカにしてます?」
さらに怒らせてしまう。
――――えっ、じゃあなんて言えばいいの?
「とられない自信、あるんですね…」
凛ちゃんがギラギラした目で言う。
―――なんか余計に火をつけてしまったような…。
他の一年生が体育館に来だして、
凛ちゃんの壁ドンからやっと、解放される。
マネージャー同士、仲良くやっていきたかったのに…。
これ、どうするの…。
背を向けて歩いていく凛ちゃんを見ながら、
私はため息をついた。