再度告白
その日の部活の帰り、
「茗子ちゃん、帰ろう」
ハルくんにいつものように声をかけられる。
「私…ハルくんとはもう一緒に居たくないから。」
ハルくんの顔を見ずに私は言う。
――――声が震えた。
――――“妹”としてでも、隣に居れればと思っていた。
でも、それは…私の好きだったハルくん。
今のハルくんじゃない。
「茗子、帰るぞ」
うつ向いている私の腕を掴んで、サクちゃんが歩き出す。
「サクちゃん、腕…痛い」
「あ、悪ぃ」
しばらく早足で歩かされてから、私がポツリと言うとパッと手を離される。
「私…ハルくん傷付けたね…」
歩きながらサクちゃんに言う。
「あいつが悪いんだろ…先に茗子を傷付けた」
「―――私の好きだったハルくん、どこ行っちゃったのかな…」
「さぁな」
家の前に着いて、
私は思い出して、鞄から可愛くラッピングされた小さな包みを取り出す。
「誕生日おめでとう、サクちゃん」
「え…これ俺に?」
サクちゃんが心底驚いたように言う。
「うん、ハルくんと私から」
私が言うと、嬉しそうに受け取る。
「サンキュ」
「せっかくの誕生日に、朝からケンカに巻き込んでごめんね…」
「茗子、大丈夫か?」
サクちゃんが心配そうに私の頭に手を置く。
「うん…それから―――サクちゃんの気持ち…応えられなくてごめん」
「本当に?」
私が謝ると、サクちゃんが聞き返してくる。
「え?」
「俺じゃダメなの?」
「ごめん…今そういう気持ちになれない」
「じゃあ、保留でも良いから、“彼女”になって」
「え!?」
「茗子を他のやつに渡したくない。だから“彼女”になってよ。」
「さ、サクちゃん?何言ってるの?」
「茗子が俺の彼女になったら、茗子もイチイチ男から告白されないし、楽だろ。俺のこと好きにならなかったら、それで諦めるから。――――半年…いや3ヶ月で良いから。」
「3ヶ月って…」
「フリでもいい。俺も他のやつに告白されるとか、もううんざりなんだ…頼む…」
「サクちゃん…」
いつになく必死に頼んでくるサクちゃんの気迫に押されて、
なぜか3ヶ月のお試し付き合い期間がスタートしてしまった。