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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
177/283

二度目の密会~航目線~

「まさか、航と杏奈が付き合うとはねー」

またもかすみに呼び出され、

昼休みにサッカー部の部室へ行くと開口一番がそれだ。


「だから…それは…」

「杏奈から聞いてるわよ、西高(うち)に受かったら付き合うって約束してたんでしょ?」


――――約束っていうか、一方的に決めつけられたんだけど。


そもそも、そんな約束した覚えもない。

いつものようにあしらっていたときに、

適当に頷いてしまったのかもしれない。


「もうずいぶん広まってるしね、噂」

かすみが楽しそうに言う。

「杏奈が広めたんでしょ、どうせ」


かすみは、

中学時代も一緒にサッカー部マネージャーをしていたからか、杏奈の性格を知り尽くしている。


「あぁ…もう…」

――なんで、こんなことに…。

俺がうなだれていると、

「いいじゃん、付き合えば」

かすみが笑顔で言う。

「あんたもいい加減茗子ちゃん追いかけるのやめて、他に目を向けたら?」

「うるせーな」


「杏奈ぐらい強引な子の方が案外上手くいくと思うわよ。中学からずっとあんたのこと好きだったんだし」

他人事だからって簡単に言いやがって。


――――でも、確かに…。

茗子ちゃんは今も春先輩をずっと想っているし、

別れたからって俺と付き合ってくれる訳ではない。


それに、弟の咲まで現れた…。


俺はこの辺で、

違う恋を見つけるべきなのかもしれない…。



「って、かすみは俺なんかと密会してて大丈夫なのか、弘也先輩にバレたら俺、マジで怖いんだけど…」

―――一応同じサッカー部の先輩の、彼女なんだから…。


「弘也は私と航のことなんて、全く疑わないわよ」

鼻で笑うようにかすみが言う。

その言動に俺はなんかムカッとした。



「ところで、去年同じクラスだった千鶴って子に聞いたわ」

「何を?」

―――こっちが本題とでもいうように、かすみが真顔で言う。


「修学旅行のことよ。―――春が額にキスしてくれたって…それはもう、嬉しそうに。」

かすみが淡々と話す。


「さらに隣のクラスに紗栄子って、千鶴と仲良かった子がいるから聞きに言った。―――どうやらそれを美穂が大袈裟にして茗子ちゃんに報告したようね」


「え、それって…」

――――じゃあただのすれ違いじゃねーのか?

ちゃんと話せば元に戻れるんじゃ…。



春先輩(あいつ)だって、

いまだに茗子ちゃんの隣をキープしてるし…まるで誰も近付かせないように。



「もともとちょっとした嫌がらせのつもりだったらしいわ。

でも春たちがそのあと別れたから、罪悪感感じてるみたいだったけど、紗栄子って子は。」

かすみがため息をつく。


「ってか、なんでかすみがそこまで真相を知りたがるんだよ。」

俺が言うと、

「だって気になるじゃない。あの二人がどうして別れたのか。」


――――まぁ、気にならないって、言ったら嘘になる。


バレンタインデーの日に、

バス停で泣いていた茗子ちゃんを思い出す。


信じられなくて、かける言葉もなくて…。


でも、茗子ちゃんが泣いているのを見たのは、

あの朝だけだった。


その日教室で見た時には、泣きはらした顔で笑ってた……。

まるで、何事も無かったかのように――――。



「春と付き合うなら、そういうのイチイチ真に受けてたらダメなのにね。」

かすみが切なそうに言う。


――――それは、誰に言ってるんだよ。

茗子ちゃんになのか?―――かすみ自身か?


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