表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
175/283

恋敵~春目線~

「部員数、増えたな!」

昼休み、寛人が俺のクラスに顔を出していた。


「―――だな」


「なんでそんな嫌そうなんだよ。―――咲もまさかバスケ部入るとはなぁ!スポーツ推薦で入った一年とこないだ互角にやりあってたぞ、あいつ」

――――しばらく見ねーうちにでかくなったな…と寛人が笑う。


「あいつ、身体能力ハンパねーから」

俺が素っ気なく返事する。


「頭も良いよな、首席で…」

「――なぁ寛人。何しに来たんだよ。」

イライラして、つい口調が強くなる。


「お前さ…茗子ちゃんとより戻さなくて良いの?」

「は?」


「そんなイライラしてるのは、茗子ちゃんを咲にとられるのが嫌だからだろ!?」

「―――サクは関係無い」


――――イライラしてるのは、自分自身に、だ。


“妹”としてしかみてないから…なんて、

我ながらバカみたいなすぐ分かる嘘をついて、

一方的に別れたくせに。


もっと引き留めてもらえる、

もっと別れたくないってすがりついてもらえると思って、甘えていた自分に。


今さら言えるわけないだろ…

別れを切り出されるのが怖くて、自分から切り出したこと。


本当は今も変わらずに愛してることなんて…。



咲は、クリスマスの日の夜、俺の部屋を勝手に開けて、言った。

『せっかく諦めようと努力してやったのに。やめるわ、俺』

それからすぐ西高(うち)を受験した。



あいつが今、キラキラして見えるのは…茗子を好きな気持ちが溢れてるから。




――――こんなはずじゃなかったのに。

嫉妬で自分の性格がどんどん悪くなっていく。


「お前さ…その…修学旅行の時のことで別れたんだったら…あいつらにちゃんと話させた方がいいと思うぜ?」

言いにくそうに、寛人が言う。


「き、キス…なんて…額に触れたかどうかもわからないやつだろ。お前らが波風立たないようにと思って、聞かなかったことにしてくれなんて…俺が言ったから…」


「俺がしたことなんだから、寛人は悪くないだろ?」

―――あの時、ババ抜きで負けた安達千鶴さんに、一抜けした中野美穂さんが言った罰ゲーム。


『澤野くんとキスすること』


あり得ない命令に、凍りついた。

安達さんは泣きそうになるし、周りは早くしろとうるさく野次る。


ここで拒否すれば安達さんを傷付けるし…。

そう思ってつい、早く終わらせたくて額にキスをした。

自分の中では、なんの感情もない、ただの罰ゲーム。

あんなの、キスなんかじゃない。



――――――クリスマス、

比嘉先輩と俺に内緒で会っていた茗子に嫉妬して、あの時冷静に話ができる状態じゃなかった俺は、

茗子にちゃんとそのことを話していなかったことに、いま気がついた。


―――でも、今さら話してどうする?


茗子は比嘉先輩と上手くいってるのかもしれないのに――――。


別れ話をしたとき、

泣きながら走っていった茗子を追わずに見ていた自分。


でも、そのあとの朝練には、いつも通りの茗子だった。

そのあとも、ずっと…、

一度も、やり直したいとは…言ってくれない。


俺が言ったとおり、

付き合う前のように、隣に“妹”としていてくれる。


茗子は――――

本当はこうなることを、望んでいたのかもしれない…。



そう思うと、何も聞けないし言えなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ