幼馴染みと下校する
「あの…」
部活が終わって、片付けているところに、
制服姿の一年生の女子が話し掛けてきた。
「私…男子バスケ部のマネージャーやりたいんですけど…ダメでしょうか?」
「え、本当に?ありがとう!」
比嘉先輩が居なくなってから、
一人で大変だったから、
その言葉に嬉しくなりつい手を握ってしまった。
その子が赤くなってうつ向く。
「あの…私、粟野凛っていいます。中学ではバスケ部でした。」
「バスケ部だったんだ、頼もしい!私はバスケ経験したことないから…」
私が笑顔で言うと、
「よろしくお願いします、相田先輩!」
凛ちゃんがホッとしたように、
ペコッと頭を下げて言う。
――――あれ?私の名前をどうして…。
不思議に思っていた時、
「茗子、帰れる?」
着替えを終えたハルくんが部室から出てきて、
私に声をかけた。
「あ、うん」
私が返事をすると、
「あれ?一年生の子?」
ハルくんが凛ちゃんの存在に気づいて声をかける。
「うん。マネージャー希望なんだって」
私が説明すると、
「それは助かるな!よろしくな」
ハルくんが、笑顔で言う。
凛ちゃんの顔がさっきより真っ赤になって、
「は…は、はい!」
そう返事をするのがやっとだった。
-―――ハルくんの笑顔を間近で見たら、
そうなるよね…分かるよ…。
心の中で嫉妬しながらも、彼女の反応は仕方がないと思った。
―――でも、ハルくんのその笑顔で、好きにならないでね。
ハルくんと体育館を出て、
歩いていると正門の前にサクちゃんが立っていることに気付いた。
「サクちゃん、帰らないの?」
私が尋ねると、
「待ってたんだよ…誰かさんが朝、時間を間違えて教えてくれたお陰で茗子と登校できなかったから。帰りぐらいは一緒に帰ろうかと思って」
サクちゃんが、ハルくんを睨みながら話す。
「え?朝?」
私がハルくんの顔を見上げると、
「さぁ?何のことだか」
しれっとハルくんが言う。
「ってハルくん!サクちゃんがうちに来ること知ってたなら言ってよ!!今日私すごくびっくりしたんだから!」
私が思い出して、ハルくんに文句を言うと、
サクちゃんが笑いだした。
「なんで笑うの?」
私がサクちゃんに言うと、
「いや、俺が壇上に立ったときの茗子のマヌケ面が面白すぎて…」
サクちゃんが笑いながら言う。
―――マヌケ面…?ひ、ひどい。
「俺が言うなって、春に言っといたんだよ。茗子のマヌケ面、見たかったから」
さんざん笑ったあと、サクちゃんが言った。
そして、私の頬を両手で挟むと、ブニュッと潰す。
「サクひゃん、やめひぇ」
サクちゃんの手を掴むと力を入れて離させる。
――――そういえば小学校の時とか、サクちゃんにこうやっていじめられてたな…。
「あ、そうそう、俺バスケ部に入る予定だから!よろしくな」
「そうなんだー」
――――ん?
「サクちゃん、今…」
私は、サクちゃんの言葉に違和感を感じて聞き返す。
「高校からバスケやってみようかと思って!」
サクちゃんが、今まで見たこともないぐらい楽しそうにニカッと笑って言った。