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いっこの差  作者: 夢呂
【第三章】
171/283

新しい環境

入学式が終わって生徒がクラスに戻る時、

出てきた一年生の中からサクちゃんを見つけるのはとても簡単だった。

「サクち…」

話し掛けようとしたところで、私は無駄だと悟った。


一際目立つサクちゃんの周りにはすでに女子が群がっていて、

とても私の声が届くとは思わなかった。


私はすぐに挙げかけた手をおろす。


ーーーそうだった……。


つい忘れかけてたけど、

サクちゃんもハルくんと同じ…気安く話し掛けれるような人じゃない。


近いはずなのに、高校(ここ)では遠い存在…。



私は寂しく思いながら、教室に入るとドンと誰かとぶつかる。

ーーー痛っ。

うつ向いていたから、頭を思いきり相手の胸にぶつけた。


「ごめん…って…茗子ちゃん?」

「航くん…ごめんボーッとしてた」

ぶつかった相手は、航くんだった。


頭を押さえながら謝ると、

「いや、全然大丈夫。」

航くんが言いながら、教室を飛び出していった。


ーーーもうすぐガイダンス始まるのに…。

どこ行くのかな?



「茗子ちゃん、知ってた?」

「え?」

愛梨ちゃんが興奮ぎみに私に言う。


「航くんにも、ついに彼女出来たらしいよ!!」

「えっ?」

なぜかショックで目の前がチカチカした。


「しかも、一年生」

ーーーーそうなんだ…。

知らなかった…

って別に私に言う必要は無いんだけど…

なんでこんなにショックなんだろ…。





新しいクラスで自己紹介も終わり、

午前中でガイダンスも終わり、部活に向かう。


「茗子」

名前を呼ばれて振り向くと、サクちゃんが一人で私の方に歩いてくる。


「サクちゃん!ビックリしたよー!どうしてここに?優美高校にそのまま進学しなかったの?」

「うん、やめた」

「勿体ないなー。進学校なのに」

「別に優美にいる理由もなくなったから」

「?そうなんだ…それって」


私が理由を聞こうとすると、

「澤野くーん」

一年生の女子が数人、サクちゃんを見つけて駆け寄ってくる。


「あ、じゃあ私は行くね…バイバイ」

一年生の視線が痛くて、

サクちゃんに手を振ると、小走りで体育館に急ぐ。


ーーー今朝、

ハルくんがなんとなく不機嫌だったのって…もしかしてサクちゃんがらみ?

ハルくんも今日知ったのかな…?


体育館に行くと、春休みに顔を出していた、

スポーツ推薦で入った一年生五人が、先に来て練習をしていた。

「相田先輩、こんにちはっ」

私に気が付いて、挨拶される。


ーーーー先輩…かぁ。

久しぶりの響きに嬉しくなる。


「皆、偉いね!頑張ってて」

私が笑顔で言うと、

五人が何かこそこそ話している。


「あ、相田先輩は…その…」

一人がなにか言いかけて、聞きにくそうに言葉を切った。

「その…彼氏とかいるんすか?」

隣にいた一年生が勇気を出したように突然言葉を繋ぐ。


ーーーー彼氏…。

「いないよ」

ーーーーいなく、なった…。


「じゃ、じゃあ…澤野先輩とは…」

また一人が聞いてくる。

「幼馴染みだよ…ただの」

私が苦笑いで答える。


何も知らない一年生が、

いつも一緒来て、一緒に帰っている私達の関係を聞きたくなる気持ちは分かる。


でも、自分が口に出した言葉が、

ブーメランみたいに返ってきて私の心に突き刺さる。


『幼馴染み…ただの。』

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