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いっこの差  作者: 夢呂
【第一章 】
17/283

恋バナ(甚と航 編) ~航目線~

「ハァ…」

「あー、マジうぜー」

(じん)が俺のため息を聞くと、

イラつきながら言い放った。


部活を引退したが、後輩に頼まれて、

顔を出して少し練習に付き合った後、

部室で着替えながら、甚が俺を睨む。


「おぃ、それはひどいだろ…」

ーーー自分は菜奈ちゃんと上手くいったからって。


「だってお前、さっきから携帯触ってはため息って…どんだけだよ…。」

「連絡したいんだけど、勇気が出なくてーー」

「もう、あと夏休みも半分だよな~、(こう)がモタモタしてるうちに、終わるな~」

ーーー簡単に言いやがって…。

悔しいが、なにも言い返せず、グッと堪える。


「航って、残念なイケメンだな、せっかくモテるのに、まさかの茗子を好きになるとは…」

「甚、それどういう意味だよ!」

「茗子だけはやめとけって、最初に忠告しただろ。あいつは、昔っから春先輩しか見えてないんだって。」


「でも、キスはした…」

「えっ?嘘だろ…」

甚が絶句する。


「なんでだ…?」

俺が呟くと、甚がすかさずつっこむ。

「俺が聞きたいわ!」


茗子ちゃんがあのときどうしてキスを

受け入れたのか、未だに理解できなかった。


俺が勝手にしたんだけど、でも…。

どう考えても、拒否だって出来たのにーーーー。






引退試合の、あの大会の日、

甚に聞いて俺は初めて、春先輩に弟がいると知った。


試合終了と同時に、

あいつが応援席にいた茗子ちゃんの方を見ていたことも。


あいつが、茗子ちゃんを想っていることも、

すぐ気付いた。



その後の花火大会で、

浴衣姿の茗子ちゃんが可愛すぎたこと、

それを、春先輩に着せてもらったという、嫉妬。

そして、あの弟の存在に焦った俺は、

いきなり告ってしまい、さらに勢いでキスしたり。



その結果、

せっかく友達として、

時間をかけて距離を縮めて、

ようやく甚の次に仲良くなれたと思っていたのに 、

自ら壊すことになった。



「とりあえず、こないだ家まで行って、謝ってきたんだろ?」

「まぁ…」

「友達としてなら、誘っても大丈夫って言ってたんだろ?ま、茗子のことだから、そう言いながらも、絶対避けるな!」

「だよな…」

他人事のように甚が言うが、

その言葉は、

こないだの公園での様子そのものだったから、

否定もできない。


「まぁ、俺と菜奈も、協力するからさ」

元気出せって、と肩をバシッと叩かれる。


まだ、茗子ちゃんには気付かれてない、

今がチャンスだから。

モタモタしていられないのは分かってる。

ーーー春先輩とかすみのこと。

二人は、もう付き合ってないこと。

知ったら、きっと茗子ちゃんはーーーー。


「よし!メール、する!……明日こそは。」

「航………マジ、乙女かよ…」

甚が呆れて、俺を置いてさっさと部室から出ていく。


「おい、待てよ」

「悪ぃ、俺、これから菜奈とデート」

ヒラヒラと軽く手を振って、甚は帰っていった。


「リア充が!!」

悔し紛れに、言って、俺はまた携帯を見つめる。




「ハァ…」


帰り道、またため息をついていると、

「あのぉ、長岡(ながおか)中の、仲西さんですよね?」

いきなり目の前に一人の女の子が立っていた。


ーーー誰だ?


「あたし、優美(ゆうび)中のサッカー部マネージャーです。こないだの試合、お疲れ様でした」


ーーーあぁ、こないだの。

あいつがいる私立中か。


「なんか用?」

「ちょっと聞きたいことあって。」

俺は素っ気なく言いながら、横を通りすぎて歩き出す。

女の子は、特に気にせず、並んで歩く。


相田(あいだ) 茗子さん、知ってますよね?」

その言葉に、思わず足が止まる。


「彼女さん、ですよね?」

「なんなの?」

ーーー今、その話題、本当勘弁なんだけど。



「私、茗子さんが邪魔なんです」

微笑んでいるが、目が笑っていない。


「あの人がいると、(さく)ちゃんが私のこと、いつまでも本気になってくれないし」


「咲……?」


聞きながらも、それが誰の事か、何となく察した。

春先輩の弟のことか……。



「しっかり、捕まえといてくださいね、こないだの花火大会の時みたいに」

バカにしたように笑うと、彼女はもと来た道を引き返して行った。


「え…?」


見られてた?


花火大会の日、

キスしたことを思い出して、

自然と口元を片手で押さえる。


ーーー何で思い出させるんだよっ!


結局、その日も、

連絡をとれずに終わってしまった……。




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