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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
167/283

「茗子、ちょっと」

昼休み、菜奈と甚が私の前に現れた。


屋上の、人のいないところまで行くと、

二人が振り返る。


「どうしたの、二人…」

ーーーーなんだか、懐かしいな…。甚と菜奈が一緒にいるなんて。


「茗子、こないだはごめん。ひどいこと言って」

「ううん、私の方こそ…」

私も菜奈に謝ると、甚と菜奈が目をあわせて微笑みあう。


「ーーー茗子、別れたって聞いたけど、何があった?」

甚が話を切り出す。

「……ハルくん修学旅行の時、同じクラスの人とキスしたんだって」


「「えっ」」

二人が同時に驚く。

「なんで、そんなこと…」

菜奈が言う。

「分からない…ハルくんに聞いてもあんなのキスじゃないって…怒っちゃって」

「んだよ、それ…」

甚が怒りをあらわにする。

「でも…それを私が許せなくて」


「許せるわけないよ、だって春先輩が悪いんでしょ?」

菜奈も私を庇うように言う。


「でも今日、久しぶりに会ったと思ったら“茗子(わたし)のことは、もう妹としてしかみてないから”って…」


「私が言うのもどうかと思うけど、それ…酷すぎる…」

「本当な」

甚が菜奈を冗談半分に睨む。


「ーーーーでもさ、なんか…朝さんざん泣いたらなんか…全部夢だったのかなって」

私は二人に微笑んで言う。

「だって、ハルくんと付き合えるなんて、夢にも思ってなかったんだし。この一年間、すごく幸せだったから…もう良いの」



「茗子…無理すんな」

甚が優しく言う。

「うちらの前でまでそんな顔しないでよ」

菜奈も私よりつらそうな顔で言う。


「ありがとう…」


ーーーーごめん。二人とも、心配かけて…。

二人に甘えたら、私きっと…どんどんダメになる。

いつまでも、すがってしまうと思う。


もう、誰にも…迷惑かけたくない。

…航くんにも、サクちゃんにも。


ハルくんが好き。



だけど、

私と付き合うことがハルくんの為にならないのなら、

いっそのこと、彼女にならなくてもいい。


約一年、ハルくんの彼女になれた。


それで充分じゃないか。


ーーー幸せだった…夢のような時間。


いや、全てが、夢だったんだ。


そう思い込むことで、なんとか平常心を保つ。

そう思い込まないと…心が壊れてしまう。


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