別れは突然
「明日、朝一緒に行こう?待ってる」
ハルくんとの距離はどんどん広まり、
話さなくなって一ヶ月と少し経った。
バレンタインデーの前日、日曜日の昼間に
久しぶりにハルくんからメールが来た。
――――ハルくんからメールが来た!
それだけで涙が出そうなくらい嬉しかった。
「うん」
私もドキドキしながら、すぐに返事を返す。
明日、バレンタインデーだし、チョコ作って渡したら、仲直り出来るのかな?
私はすぐに材料を買いに出掛ける。
「おはよう」
「おはよう…ハルくん」
朝、
家を出ると、久しぶりにハルくんが私に微笑んで挨拶してくれた。
「ずっと逃げててごめん」
ハルくんが言う。
「私も…ごめんなさい」
私も謝る。
「茗子の気持ち、ちゃんと確かめなくて…俺、本当自分勝手で…」
「ハルくん…」
ーーーー仲直り、出来るのかな?
私がドキドキしながら久しぶりに隣を歩く。
「大丈夫、俺は。」
ハルくんが突然、よくわからないことを言い出した。
「だから、茗子が言って?」
ーーーえ?
「何を?」
「何って…別れたいって」
ハルくんが苦笑いで言う。
「え?」
ーーーーワカレ……?
「俺と付き合うと、茗子はどんどん束縛されてく。それじゃだめだなって思ったんだ。
―――茗子のためにも。俺のためにも。」
「…そんな」
「だから、また“兄妹”として、仲良くしよう…付き合う以前みたいに」
「…なんで…」
ーーーーハルくん、何言ってるの?嘘だよね?
これは…夢?
「大丈夫、俺はもう茗子のこと妹としてしかみてないから」
「………そんな…ハルくん、待って」
私の声がかすれる。
ーーーー一方的に…ひどい。
しかも、もう私のこと勝手に“妹”扱いなんて…。
「行こっか、茗子ちゃん?」
ハルくんが微笑んで私の名前を呼ぶ。
――――付き合う前のように、“ちゃん”付けで。
私は、ハルくんの前から消えたくて…。
消えてしまいたくて、走った。
走りながら、視界がぼやけていく。
「うっ…」
バス停に着くと涙が止まらなくなった。
周りの目もあるのに…しゃがみこんで嗚咽が漏れる。
「茗子ちゃん…」
航くんの声が頭上から聞こえてきた。
ちょうどバスが来て、航くんが私の手をそっと引く。
「行こ、一緒に…」
このままだとハルくんに追い付かれるから、
私は素直に乗ることにした。
ーーーーなんで?どうして?
ハルくん、私のこと好きだって…愛してるって…
言ってくれたのに・・・。
「朝練、間に合うかな…」
航くんが言う。
「いつも、もっと早いバスなんだけど今日寝坊しちゃってさー」
「………」
明るく振る舞ってくれてるのに、何も言えなかった。
口を開いたら、きっとまた泣き出してしまうから。
「茗子ちゃん、バスケ部の朝練間に合う?」
「………」
黙って頷く。
「そっか…」
航くんが話すのをやめた。
ーーーーーフラれたってことだよね…。
私はまた、片想いから始めるべき?
ーーーーハルくんの中では、もう終わってしまったのに。