噂話
「嘘だよね?茗子ちゃんっ」
冬休みが終わり、登校するとすぐ、
愛梨ちゃんがすごい勢いで私の席に来た。
「嘘?何の話?」
私が言うと、
「春先輩と別れたって話だよ」
彩が愛梨が言うより先に口を出す。
―――別れては、ないと思うけど…。
でも実際、別れようって言われるのが怖くて避けて、逃げてる現状を見れば、周りからはそう噂されても仕方ない。
「うん、多分…」
「多分って何?ケンカでもしたの?」
「うん…なんか色々重なって…」
「話なら聞くよ?」
愛梨が優しく言う。
「ありがとう…でも大丈夫!」
私が言うと、
「その顔のどこが大丈夫なのよ…」
呆れたように彩が言う。
「良いの?春先輩のファン、急にアピールし出したけど…」
愛梨が畳み掛けるように言う。
「特に三年生…卒業間近だからじゃない?」
ー―――そんな…ハルくんをとられるのは絶対嫌だ。
だけど…今の私には、ハルくんの隣には居られない。
ハルくんが私を必要としていないから。
「愛梨が余計なこと言うから、茗子がますます落ち込んだじゃない!!」
彩が愛梨に言う。
「ごめん、そんなつもりじゃ…」
愛梨がすまなそうに言う。
「大丈夫、大丈夫」
自分に言い聞かせるように私は呟いた。
「相田さん、今日の昼休み生徒会室に集合なの忘れてる?」
昼休みに彩と愛梨とのんびりごはんを食べていると、
隣のクラスの花井さんが、息を切らせて私に言う。
「あ…」
私は思い出して、真っ青になる。
「先輩たち、待たせてるよ急いで」
「ごめんなさい…」
「謝るのはあと!」
花井さんが言いながら走り出す。
私も後について走る。
「遅くなって、すみません…」
生徒会室について、私はすぐに謝る。
「花井さん、ありがとう。座って?」
私が頭を下げても聞こえていないように、
生徒会長のハルくんが花井さんに言う。
「では、揃ったようなので生徒会活動報告会を始めます」
ハルくんの声が生徒会室に響き渡る。
―――――ハルくん、まだ怒ってる?私が悪いの?
どうしたら、許してくれるの?
仲直りできないのかな…。
張り裂けそうになる気持ちを抑えて、
黒板に意見を書いていく。
「今日の報告会での意見、まとめたら提出してくれる?」
報告会が終わると、花井さんに言われる。
「あ、はい…」
「ところで相田さん、会長とどうなってるの?」
「え…」
「別れたって噂、本当?」
花井さんに小声で聞かれる。
「違います」
私はすぐに答える。
「あれ?そうなの?」
花井さんが意外そうな顔で言う。
「私てっきり…」
「私に聞かないで、ハルくんに聞いてください」
花井さんの言葉を遮るように言うと、
先に教室へ向かう。
―――別れたいのかどうかなんて、私が知りたいよ。