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いっこの差  作者: 夢呂
【第一章 】
16/283

プチ・ホームパーティ

夕方より前に、図書館から家へと向かう。


あたりはまだ明るく、昼間みたいに暑さもある。



家の近くを歩いていると、

ハルくんのご両親に会う。


「こんにちは」

「あら、茗子ちゃん。今日は宜しくね!」

「?何がですか?」

訳が分からず、首をかしげる。


「あら、お母さんから聞いてなかった?今日私たち同窓会なのよ。そしたら、茗子ちゃんのお母さんが、(はる)(さく)に、ぜひお夕飯をって言ってくれて…」

「そうなんですね…」

朝のお母さんの様子を思い出して、納得した。


「助かっちゃったわ、ありがとね!お礼に今度、うちにもごはん食べに来てね」

「あ、はい…」


「じゃあ、行ってきます!!」

ハルくんのお母さんは、お父さんと嬉しそうに出掛けていった。


―――二人は、中学時代の同級生だって、言ってたっけ。



「ただいまー」

家に帰ると、お母さんが満足そうに私を出迎えた。

「おかえり!どう?キレイになったでしょ?」


「……お母さん、今日ハルくん来るから掃除とか頑張ってたのね…。」

「あれ?なんで知ってるの?」


「今、そこでおばさんから聞いた。」

「なんだぁ、茗子びっくりさせようと思ったてのに!!残念だわ」

「…いや、びっくりしてるから、大丈夫。」


とりあえず、自分の部屋に戻りひと息つく。


ハルくんが図書館で言ってた“今日”って、

この事だったのか―――。


一人、部屋でソワソワして、そうこうしているうちに夕方六時になり、家のチャイムが鳴る。


「こんばんはー」

ハルくんの声だ!!


バクバク鳴り出した心臓を、

なんとか意識しないようにする。



「はーい、春くん、どうぞ上がってー!」

「お邪魔しますー」

お母さんとハルくんが話してるのが聞こえる。

階段からその様子を覗いていると、

ハルくんに気付かれた。


「こんばんは、茗子ちゃん」


「こんばんは…」

目を伏せてあいさつする。


「はい、春くんはここ、座って座って!」

嬉しそうにお母さんがハルくんに言う。

「ありがとうございます」

勧められた席にハルくんを座らせると、

私に声をかける。

「めいこ、ボサッとしてないで、ほら、手伝って」

「はぁい」



料理を運び終えて、席につこうとして、

お母さんが思い出したように、ハルくんに尋ねる。

「あら?そう言えば、今日咲ちゃんは?」


「あ…部屋には居たんだけど。声かけても返事なくて」

ハルくんが困ったように言った。

「じゃ、ちょっと茗子、咲ちゃん連れてきなさいよ」

「え、それなら俺が……」

「春くんは!おばさんの相手してよー、久しぶりに話すんだし」

優しいハルくんは、昔からお母さんには全く逆らえないらしく、

「じゃあ、これ」

私に家の鍵を預けてくれた。



とりあえず、家の呼び鈴を押してみたけど、

サクちゃんが出てくる気配もなく、

ハルくんに借りた鍵で玄関を開ける。


二階の一番奥、

サクちゃんの部屋に来るのはいつぶりだろう。

「サクちゃん?あ、じゃなかった!サク…?」

軽くノックして、声をかける。

返事がない…。


なんか、音楽かかってる…?

そのせいで聞こえないのかな?



「入るよー?」

ドアを開けると、私の目に、

信じがたい光景が飛び込んできた。


「ごめんなさいっ」

慌ててドアを閉める。


床に脱ぎ散らかった服。

ベッドに女の子と、

その上に覆い被さるようにしてたサク……。


しばらくして、

女の子が部屋から飛び出してきた。


目が合うと、

私を睨むようにして、帰っていった。



「……茗子?」

サクに呼ばれて我に返る。


「えっと、サクちゃ、サクを呼んでこいって、うちのお母さんに言われて―――」

全く顔が見れない。


「あぁ、今日言われてたな、そう言えば」

素っ気なく言われる。


「ごめん、邪魔するつもり、なくて」

「別に良いよ、暇潰しだし。」


「え…」

暇潰しって……。

ひどいよ…。

相手の女の子の気持ちを考えると、

かわいそうになる。


どうしちゃったの、サク……。



「なんか、変わったね…サク」

それだけ言うと、咲を置いて、

階段を駆け降りて、ひとり、家へと戻る。



「ちょっと、咲ちゃんは?」

お母さんに聞かれ、

「あ、うん、来ると思うよ…」

曖昧に返事をする。


「ちゃんと呼んできたの?」

「呼んだってば」

お母さんへの返事に少しイライラが混ざった。


「こんばんはー」

しばらくして、サクが来た。


来てくれたんだ…。

来ないと思ったのにーーー。


「あら、咲ちゃん、しばらく見ないうちに、こんな背が高くなったのー?」

「おかげさまで」

「何いってるのー、ほら、座って!!」

お母さんと楽しそうに話す、

サクを見て切なくなった。


ここにいるのは、

私の知ってるサクちゃんなのに――――。


なんだか、サクが知らない男の人に見えてしまう。



ハルくんも、お母さんとサクと、

楽しそうに会話してる。




私だけが、

胸の中にモヤモヤしたものを抱えて、

会話に入れないでいた―――。






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