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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
159/283

目撃 ~春目線~

「え、茗子なら、少し前に出掛けるって出てったけど?」

驚いたようにおばさんに言われ、

「そうですか」

俺は茗子の家に背を向けて、歩き出す。


ーーーーケイタイも繋がらないし…、どこ行ったんだ。


焦る気持ちを抑えて、街へ向かう。




昨日の試合のあと、

相手チームのルーキーの一年、牧野に声をかけられたことを思い出す。


「澤野さん。今日はありがとうございました」

「……こちらこそ」

ーーーー負けた相手になんでお礼なんか…。


やっぱり全国レベルだと、パスがうまく通らない。

もどかしさに気が立っていた俺は、

牧野にも無意識に苛立っていた。




「西高とはまた試合したいです。またインターハイで会いましょう」

「ーーーあぁ」

にこやかに差し出された手を仕方なく握る。

「まぁ、俺は西高のマネージャーに会いたいだけですけど」

ニヤッと笑いながら言う。

「!?」

「可愛いですよね、彼女」

彼女、の意味がどういう意味なのか、聞く前に

笑いながら牧野は去っていった。

ーーーーなんだ、あいつ。

茗子のこと、狙ってるのか………?


余計に苛立ったまま、体育館を出ると、

茗子が寛人と手を握っていていて、俺は怒りが爆発した。


「何してるんだ、寛人…」


ーーー寛人が慌てて、ただ今日のお礼を言っていただけだと言っていたが、

こうやって隙だらけな茗子にも今日は苛立ってしまう。





昨日、何も話さずに帰ったから…………。

茗子、誰かと約束でもしたのか?


昨日の自分の態度に、今更ながら後悔する。


すると、本屋の隣のカフェに、

茗子の姿を見つける。


ガラス越しに見えた、茗子の顔にホッとして

声をかけようと近づくと…。


茗子の向かいには、比嘉先輩が座っていた。


ーーーーなんで、あいつが……茗子と?


俺の頭の中が真っ白になった。


ーーーあいつと約束してたのか?クリスマスに?


茗子が、楽しそうに笑う比嘉先輩に何か言われ、

顔が赤くなってうつむいた。


もしかして、茗子は、修学旅行中に、比嘉先輩と?

嫌な予感が頭をよぎる。


修学旅行から帰ってきた日のことを思い出す。

茗子の家で、抱いた日のことーーー。

珍しく茗子が本気で最初抵抗してた…。



「覗きか?」

俺が立ち尽くしていると、いつの間にか、

比嘉先輩が俺の前に立っていた。


「お前…なにしてんだよ」

俺が怒りを抑えて言うと、

「こっちの台詞だ。」

比嘉先輩が逆ギレした。


ーーーなんで、コイツが俺に怒るんだ、ヒトの彼女連れ回しといて…。


「メイコちゃんを悲しませんなよ、そんなんなら俺がマジで奪うぞ」

比嘉先輩が睨みながら言うと、俺の横を通り、行ってしまった。



ーーーーそんなこと、させない…。

比嘉先輩の背中を睨みながら俺は心の中で言う。


しばらくして、

視線を茗子がいたはずの席に戻すと、

茗子の姿が無かった。


ーーーーしまった…見失った…。


慌てて周りを見渡すが、

人が多くて、見つけることができなかった。


ーーーー結局、その日茗子と会ったのは、

茗子の家でクリスマスパーティが始まった時だった。




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