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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
157/283

爆弾

ーーーー試合は、70ー58で、負けてしまった。


やっぱり全国レベルになると、身長差も違うし、

シュート率も違う。


三年生が抜けて、二年生が主なメンバーになり、

まだまだ課題が多いようだった。




「残念だったね」

私が片付けをしていると、さっきの先輩達三人に声をかけられた。


「わざわざ応援に来ていただいてありがとうございました」

私が頭を下げると、

「ふふ、彼女としての挨拶?余裕ね」

さっき目があった先輩が言う。

「いや、そんなつもりじゃ…」

ーーーーもしかして、気に障った?

慌てて謝ろうとすると、


「良いの良いの。相田さんは澤野くんの彼女、そんなの皆知ってるし。」

「澤野くんが彼女一筋なのも…ねー?」

先輩同士、頷いて言う。


「なんか、ごめんね。それなのにこないだ澤野くんに浮気みたいなこと、させちゃって」

クスクス笑いながら、先輩の一人が言う。


ーーーー今、何て言った…?“浮気”?

私は耳を疑った。


「浮気だなんて、あんなの浮気には入らないでしょ?美穂ったら」

「そっか、でも、千鶴とチューしてたよね、修学旅行で」

「やめなよ、彼女の前で。」

千鶴と呼ばれた人が頬を赤く染めて言う。


「大丈夫、本気じゃないから。ただの思い出作りだし。」

千鶴さんが言う。


ーーーー本気じゃない?思い出作り?

頭の中がグチャグチャで、混乱している。




「あ、お前ら…」

寛人さんが、三人に囲まれてた私の間にダッシュで入ってきた。


「余計なこと、言ってないだろーな」


「余計なこと?」

美穂さんという人が、寛人さんに近づきながら聞く。

「それって、修学旅行の最終日の夜のこと?」


「………っ」

寛人さんが言葉を失なってうろたえた。



ーーーー修学旅行の最終日の夜、ハルくんが千鶴さんとキスした。


それを寛人さんも知ってて…私にバレないようにしてた…?


寛人さんが何も言わないのは………

それが真実だから…。



なにそれ…なんでそんなこと…。


ーーーここで泣いたら、先輩達の思う壺だ…。

悔しいから泣かないようにグッと堪える。



「はい、もう終わったんだし、帰れ帰れ。春なら他のチームのやつに引き留められてるから会えねーよ」

寛人さんが三人を無理矢理追い返す。


「……茗子ちゃん…ごめん」

「なんで先輩が謝るんですか?」

ーーー寛人さんを責めたって仕方ないのに…。

知ってて黙っていたことに、ショックを隠しきれず、つい冷たい口調になる。


「俺があの時…誘わなければ」

「………」

ーーーーあの時って、いつ?私はその場に居なかったから、何も知らない。

その場に…居れなかったんだから。


「本当、春は何も悪くないんだ。だから春を責めないであげて。出来れば聞かなかったことにしてくれない?」


寛人さんが私の前で、手を合わせて懇願する。


「分かりました…」

私が頷くと、寛人さんが心底ホッとした顔をして、

「ありがとうっ」

と私の両手を握った。



「何してんだ、寛人…」

ちょうどその時、ハルくんが帰り支度を終えて私達の前に現れた。


バッとお互い手を引っ込める。


「いや、今日はありがとうーとかって茗子ちゃんにお礼を…ね?」

ね?と寛人さんが私に同意を求めるので、

「うん…」

私も笑顔をつくって頷く。


「ふーん。じゃあ手とか握らなくていいから」

ハルくんが寛人さんを睨みながら不機嫌そうに言う。


「ごめんごめん、つい、な」

笑いながら寛人さんが部員の皆に帰ろうと声をかける。



隣に来たハルくんは、

試合に負けてしまったからか、

それとも、

寛人さんが私の手を握っていたことに嫉妬しているのか、不機嫌そうだった。




私は、修学旅行でのことが気になって、

頭の中はその事でいっぱいになっていた。


ーーーー聞かなかったことにする、なんて…。


無理に決まってるのに…。


聞いてしまったら、後悔する。

傷付くのは、私。


千鶴さんにキスしたのはハルくんなのに、

ーーーどうしてハルくんが悪くないの?



泣かないようにするのが、精一杯で、

帰り道のことは、何も覚えていない。

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