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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
154/283

帰ってくる日

「おはよ、茗子ちゃん」

「おはよう」

ハルくんが修学旅行から帰ってくる日の朝、

バス停で、甚と航くんに会った。


「おはよう」

二人に挨拶を返す。


「今日だっけ?春先輩帰ってくるの」

「うん…」

ーーーやっと今日会える…。

考えただけで笑みが溢れる。

「…嬉しそうだな、茗子」

甚がニヤニヤしながら、言う。


…………甚を見ると、

つい菜奈のことが浮かんで、私はいつも通りに話せない。


「菜奈のこと、気にしなくていいから」

甚が私の心を読んだかのように、言った。


「俺も、もう気にしてない。いや、気にしてないってのは嘘だけど。ーーーー菜奈の幸せは壊したくないから邪魔する気はない」

「甚…」

「だから、お前がそんな顔すんな!!お前は俺らと違う。春先輩は、大丈夫。」

ーーー甚が、つらいのに…なんで私を励ましてるの?



「お前、今完全に俺の存在無視してるよな」

航くんが甚の横から口を出す。


「航は、しつこい!お前もさっさと次行け、次!」

甚が航くんをどつく。



「?」

二人の会話はよく分からなかったけど、

甚は航くんのお陰で元気になりつつあることは分かった。




「ありがとう」

甚と別れて航くんと教室に入るとき、

私は航くんに言った。

「甚の側にいてくれて」


「茗子ちゃんがお礼言うの、おかしいだろ」

航くんが笑って言った。

「友達なんだから、当たり前だろ」


「そっか。でも、私にはしたくても出来なかったから。」

ーーー甚がつらいとき、側にいたかったけど…。

サッカー部のマネージャーでもないし、同じクラスでもない。

菜奈の親友だから、どうして良いのかも分からなかった。


「茗子ちゃん、優しいな」

航くんが優しい顔で言った。

「だから……」


航くんが何か言いかけて口を押さえる。

「?航くん?」

続きを聞こうと航くんを見つめると、

「何でもない、じゃあ…」

航くんは自分の席に行ってしまった。


………『だから……』何?






放課後、体育館へ行くと、

部活のメンバーに、二年生が戻ってきていた。


ーーーーハルくん!


「茗子、ただいま」

ハルくんが私に気づいて、近付くと、頭を撫でる。

「おかえりなさい」

抱きつきたいのを我慢して、私は応える。


ーーー会いたかった…。





部活が終わり、家に帰ると、

「あ、母さんが夕御飯に茗子連れて来いってメール来てた。…茗子、うちで夕御飯ちゃんと食べてなかったのか?」

「え、ううん…昨日はご馳走になったよ」

私が言うと、

「また遠慮したのか…」

ハルくんがため息をつく。

「………」

「着替えたら、おいで」

ハルくんがそう言いながら、自分の家に入っていく。



夕御飯をハルくんの家で食べてから、

二人で私の家に帰る。


「これ、お土産」

「ありがとう」

ーー箱を開けてみると、装飾の綺麗なオルゴールが入っていた。

中が小物入れになっている。


「あと、チョコレート」

「こんなに?」

「おばさんたちと食べて」

「ありがとう」



「ー………」

会話が途切れて、なんだか緊張する。


ーーーすごく久しぶりに会う気がして…、なんか恥ずかしくて顔が見れない…。


オルゴールに視線を落としていると、

「茗子」

ハルくんが私の頬に手を添える。


ドキドキしながら、ハルくんに視線を合わせると、

唇が塞がれた。


「………んっ」


舌が入ってきて、濃厚なキスに翻弄される。

「ん…は、っ…ハルくっ…」


待って待って……待って…



だんだん、抵抗する腕に力が入らなくなる。


ーーーーハルくん…?



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