休日の過ごし方【前半】
「ーーーじゃあ行ってくる。何かあったらすぐ携帯電話に連絡するのよ?」
日曜日の昼下がり、
お母さんが慌ただしく家を出る。
「大丈夫だよ、心配しないで。ーーーそれより、パスポート、持った?」
「大丈夫、持ったわよ。ーーーじゃあ春くん、茗子を宜しくね」
一緒に見送ってくれたハルくんに、お母さんが言うと、
「はい、気を付けて行ってきてください」
ハルくんも手を振る。
「行っちゃった…」
「明日は俺も修学旅行だし…茗子一人で大丈夫か俺も心配…。」
ハルくんがお母さんが乗ったタクシーを見送りながら言う。
「まぁ、母さんも夕御飯は澤野家で食べるように言ってたから、ちゃんと顔出してやって。心配するし」
「ありがとう…」
そう言いながら、二人で私の家に入る。
「今日は部活も朝練だけで終わったし。期末試験も終わってるから、やることに追われてなくて変な日曜日だな」
「そう…だね」
話しながらリビングのソファに座る。
「どこか、出掛けたい?」
ハルくんが微笑んで言う。
「え、うん…」
ーーー出掛けても…良いけど…。
行きたい場所が特に浮かばない。
「映画でも観に行く?」
ハルくんが私に言う。
「…映画なら、家でDVD借りてきて、観たいかな…」
ーーーー街に出ると、
ハルくんを見る他の女の人の視線が気になるから。
「じゃあレンタルショップ行こっか」
「え、ハルくん良いの?」
ーーーーハルくんはいつも私の希望を尊重する。
「俺も、茗子と二人で居たいから」
ーーーーハルくんは、いつも私の欲しい言葉をくれる。
手を繋いで歩き出す。
「春、明日から北海道ねー」
夕方、澤野家で早速夕御飯を食べる。
「母さんねー、チョコレート買ってきて欲しいわ」
「はいはい」
おばさんのことばにハルくんが頷く。
「茗子ちゃん、明日からもうちで夕御飯は食べてね。約束よ」
「ありがとうございます」
おばさんの気遣いに、笑顔でお礼を言う。
「今日も、おうちで一人で寂しいだろうから、春一緒に泊まってあげたら?」
「「えっ」」
私とハルくんが同時に驚く。
ハルくんのお父さんは、お茶をブホッと激しく吹いた。
「え、母さんなにか変な事言ったかしら?」
「ダメだろ、泊まりは…」
おじさんがおばさんに言う。
「え、だって二人は恋人なんだし…。私たちだって春ぐらいの時にはーーーー」
「母さんっ、やめて」
おばさんの高校時代の話をハルくんが必死に阻止した。
ーーーーハルくんのご両親は、中学からの同級生カップル。
二人のなれそめは聞いたことがある。
おばさんは、今と変わらず当時も美人で、
高嶺の花だった。
おじさんは、入学式で一目惚れして、必死にアプローチして、付き合い始めて…。
二人は高校も大学も別々になったけど、社会人になってすぐに結婚したって。
「それに、茗子ちゃんのお母さんが頼んでいったのよ?春を茗子ちゃんの家に泊めて欲しいって」
「「えっ」」
ハルくんのお母さんの発言に、私とハルくんがまたハモった。
「今夜、雷雨になるらしいのよ。茗子ちゃんが怖がるからって」
「カミナリ…」
私が怯えそうになると、
「そう言うことなら、春、今日は茗子ちゃんの側に居てあげなさい。」
ハルくんのお父さんが言った。
「ただし、変な事するなよ…」
おじさんは真剣な顔でハルくんに言った。