聞けない話
「あれ、茗子ちゃん。」
ハルくんのクラスに向かうと、寛人さんに声をかけられる。
振り向くと、
女装姿の寛人さんが立っていて目を見開く。
「あ、驚いた?」
笑いながら寛人さんが、言う。
「ちょっと…ごつくて怖いですね」
苦笑いで言うと、
「俺もそう思う」
寛人さんも笑って言う。
「ところで、ハルくん…いないですか?」
「あれ?もしかして約束してたの?」
「…はい」
「春ならさっき、莉子先輩に連れてかれたけど?」
「……誰ですか?」
「あ、茗子ちゃんは居なかったから知らないのか。花井莉子。去年の三年で、ミス西高に選ばれた人だよ。春とはその時に知り合ったみたいだけど。」
「え、ミス西高…って」
ーーーーてことは、その人って…。
ハルくんと去年、キスしたって人?
私の目の前が真っ暗になる。
「お、春!茗子ちゃん待たせんなよな」
寛人さんの声で、
顔をあげるとハルくんが走ってくるのが見えた。
「ごめん、茗子。待った?」
ハルくんが息を切らせて言う。
「ううん…私が予定より遅くなったせいだし…。」
私は笑顔を作って答える。
「茗子?」
顔を見られないように、強引に腕を引いて、歩き出す。
「行こ、早くしないとハルくん、また仕事に戻るんだよね?」
ーーーー女の先輩と…どこで…何を話してたの?
どうして何も言ってくれないの?
「ハルくんの女装姿、見たかったなー」
「絶対やだ」
ハルくんがハッキリと言う。
「いつやるのか教えてよー」
「やだ」
ーーーー私は必死に空元気でごまかす。
教えてよ…………。