文化祭での再会
「去年もあったよな、オバケ屋敷」
航くんが隣で言う。
「あったね。私本当に怖くて、菜奈にしがみついて怒られたよね」
思い出しながら、二人で笑いあう。
「こうやって茗子ちゃんと二人で話すの、久しぶりだな」
航くんが嬉しそうに言った。
「そうだね」
私も微笑んで言う。
「良かった、またこうして話せて」
「?」
航くんの言葉に、首をかしげていると、
「茗子」
私の名前を呼ぶ声がして、振り向く。
「サクちゃん」
ーーーー本当に来てくれたんだ…、ってなんか周りにいる女子の視線が皆サクちゃんに向いてる…。
嬉しく思ったのも束の間で、私は驚いてしまった。
「オバケ屋敷?面白そうじゃん」
私の持つ看板を見て、周りの視線を気にすることもなく、サクちゃんが言う。
「こんにちはー」
サクちゃんと一緒に来ていた男の子達も、
私に挨拶してくれる。
「オバケ屋敷は、あっちの校舎の一階な」
航くんがぶっきらぼうに伝える。
「あれ…この間の…」
サクちゃんが、私の隣にいた航くんの存在に初めて気づいて驚く。
「前に試合でも、会ったな」
航くんが低い声で言う。
「試合以外でも見かけてるけど?茗子の近くうろついてたから」
サクちゃんも威嚇するように言う。
「お前もうろついてただろ」
ーーーーえ…あれ?なんでこんな険悪な感じに?
「咲、来てたのか!?」
その時、ハルくんが見廻りの仕事中で通りかかった。
「春…」
「春先輩…」
二人が同時にハルくんを見る。
「どうしたんだ?二人とも…」
二人の険悪な雰囲気に、ハルくんがこそっと私に聞く。
「いや、なんか…私にもよく…」
ハルくんが来たことで、周りの視線が倍近くなり、
すごく恥ずかしい…。
「茗子、案内しろよ、オバケ屋敷」
「え…サクちゃん?」
サクちゃんが突然、私の腕を引っ張って、
ハルくんの隣から遠ざけるように歩き出す。
「ちょっと…」
航くんが引き留めようとすると、
「まぁ、いんじゃない?茗子が案内してあげたら……仕事なんだし」
ハルくんが笑顔で言うと、
それを聞いたサクちゃんが笑顔になり、
「彼氏もあぁ言ってるんだし?行こうぜ茗子」
私の腕を引っ張って歩き出す。
ーーーーハルくん?
後ろを振り向いても、
ハルくんが笑顔で手を振っていた。
「航くん、ごめんね!すぐ戻るから」
手を引かれて行きながら私はそれだけ言うと、
人混みに紛れて、後ろを向けなくなった。
ーーーーこれって、案内してるというより、
私が連れていかれているような…?