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いっこの差  作者: 夢呂
【第一章 】
14/283

恋バナ(茗子と菜奈 編)

「え、それで結局、そのまま帰ったの?」

菜奈が混乱してるのか、声を荒げる。

夏の暑いお昼過ぎに、菜奈が心配して家まで来てくれた。

私は、昨日のことを全て、菜奈に話した。


菜奈と甚とはぐれて、

仲西くんとなぜかキスして……、

した後に急にいたたまれなくなり、

何故かダッシュで家に帰ったことをーーー。


大好きな花火が「ドォンドォン」と背後から聞こえていたけど、見ずに………。


振り返らなかったし、

仲西くんも追いかけては来なかった。


「ごめんね、昨日…それで、菜奈は花火楽しめた?」

「うん、甚とね~」

菜奈が照れながら続ける。

「付き合うことになったんだー」

「えっ!?」

驚いて聞き返す。

「私さ、甚はずっと茗子のこと、好きだと勘違いしてて…」

「それは、無いっ!」

「甚にも言われた…」

「甚とは友達だよ、そんな(ふう)に考えたことないし」

「それも、言われた…」

「菜奈が、甚のこと好きだったなんて、知らなかったし!いつから?」

驚いて早口になる。

「いつからだろうね…分かんない。気付いたときには意識してたし……」


「全然知らなくて、ちょっとショック…」

グラスに注がれてたお茶を一口飲むと、

菜奈が言う。

「ごめん、でも茗子と甚、仲良いからさ、なんか…言い出しにくくて…それに」

「それに?」

「茗子、春先輩のことで、それどころじゃなかったでしょ」

ニヤニヤしながら菜奈が付け足す。


ーーーハルくん。


同時になぜか頭の中に、仲西くんが浮かぶ。


昨日のことを、思い出して、顔が赤くなる。


どうしたんだろ、私……。



その時、家のチャイムが鳴る。

お母さんが対応してくれてるのが、何となく聞こえてくる。

そして、玄関から呼ばれた。

「めいこぉ、仲西くんが来てるわよ~」

「「え…」」

菜奈と私は、顔を見合わせる…。

すごく、会いたくない…。



「私、代わりに行ってくるよ、茗子、昨日の今日だから直接話したくないんでしょ?」

「でも…」

「何か、伝えることある?」

「…特に…無い」

「じゃあ向こうの言い分だけ、聞いてーーー。」

菜奈が私の部屋から出ていこうとする。

「菜奈っ。」

咄嗟に、声をかけて引き留める。

「ん?」

「私……行ってくるよ、大丈夫…」

バクバクうるさい心臓を押さえて、

自分に言い聞かせるように、伝えた。


「めいこ…頑張って!!私ここで、待ってても大丈夫?」

「うん、お願い。待ってて!」

「分かった!!」

菜奈の笑顔に励まされて、私は玄関に向かう。






家の前にある、公園のベンチに座りながら仲西くんが言った。

「座ろっか…」


私は黙って、一人分の間を空けて、座る。

お互いにうつむいたままでいると、

先に仲西くんが話し出した。


「昨日は、本当ごめん……。」

「………」

「俺、本当反省して……、どうかしてた。あまりに茗子ちゃんかわいくて、我慢できなくて…。って、そうじゃなくて!!」

「!!!」

かわいいって言葉にまた赤面する。


「そうじゃなくて……、焦ってたんだ。昨日、春先輩の、弟の存在を知って…。」

「え?」

それは、サクのこと?

「春先輩だけじゃなくて、あの弟が……、なんだか茗子ちゃんのこと奪うんじゃないかと思ったら、なんか……。とられたくなって、焦って。」

「サクは、そんなんじゃないよ…」

そういうのじゃない、サクは。

なんだか、黙っていられなくなって、つい言葉を発してた。



「分かんない?」

「なにが…?」

顔をあげると、仲西くんも私を見ていた。


「めいこちゃんの事が好きなんだ。だから、不安なんだって」

¨好き゛のことばに心臓が高鳴る。

「………」

「もう、あんなことしないから。付き合おう、俺達。ダメ?」

「考えさせて…ください」

俯いて、そう言うのがやっとだった。


「じゃあ……、友達のままでも良いから…。お願いだから、避けるのだけはやめてくれないか?」

「……頑張ってみる。」


「良かった…!それだけでも、救われるわ、俺。」

笑顔で言う仲西くんに、胸が締め付けられる。

そんな、無理して笑わないでーーー。



「ごめんね、昨日ーー。」

私も公園を出て、家に戻る時、謝った。

「何が?」

何ってーー。

「勝手に、先に…帰ったりして…」

「あぁ、そんなこと。全然気にしてないから、むしろ俺もイッパイイッパイで送れなくてごめん……。考えなしにキスとかしたせいで……。」


ーーーキスとか言われると…!


「あ、ごめん……もう言わない」

私の赤面に気付いた、仲西くんも、赤くなって黙る。


「じゃあ、また」

家の前で別れると、仲西くんが言った。

「あのさっ」

「?」

「今度、また遊ぼう?四人でさ…」

「…うん」

私が返事すると、嬉しそうに帰っていった。



私もすぐに菜奈の待つ部屋へと戻る。



「はぁ…」

部屋に入るなり、その場にへたりこんだ。

「頑張ったじゃん。話せたんでしょ、仲西くんとちゃんと」

菜奈がよしよし、と私の頭を撫でる。


「成長したね、茗子。こういうことから、逃げなくなって」

「とりあえず、友達のままで、って伝えたの。」

「うん」

「まだ、付き合うとかーー考えられなくて」

「うん、いんじゃない?」

「相手の気持ちとか…、考えたことなくて…」

「相手の気持ち?」

菜奈が首をかしげる。


「私さ、今まで仲良くなったらすぐ“好きだ”とか“付き合ってくれ”とか言われて、男友達が友情を裏切ったって思って……。勝手に傷ついて、断る時も、相手のことなんて裏切り者みたいに思って、ひどい言い方してた……よね?」

「あぁ、“なんでそんなこと言うの?もう話し掛けないで…”とか?」

「うん…今思うと…相手の気持ちとか考えてなかったなって、自分が勝手に被害者ぶってて」



「仲西くんにそれを気付かされたんだね!!」

菜奈が納得したように言う。


「なんでだろ…仲西くんって、苦手なんだけど…。でも…今までとはなんか違うんだ…。私のこと、本当に見てくれてる気がして…。私もちゃんと向き合わなきゃ失礼かなって気になって」


「良いことだね!」

菜奈が笑顔で言う。

「今まで告ってきてたやつらはさ、私も、茗子のこと本当に好きだと思えなかったし。なんかただ、かわいいから付き合いたいって思ってるようにしか見えなかったから。だから茗子もそうやってきつい言い方になってたんだと思う。」


「でも、仲西くんは、違う気がするよ、私は。」

「菜奈…」

「茗子の気持ち、春先輩から仲西くんに向かってる気もする…私は、ね。」

そうなのかなーーー。


ハルくんに着付けてもらったときのことを思い出す。

胸元をキレイな指先が動いてたことや、

間近にあった大好きな顔。


大好きな笑顔で「いってらっしゃい」と送り出してくれたこと。



確かに、仲西くんにもドキドキする。

これは、恋なのか分からないし、

考えようとしても、

やっぱり、頭に浮かぶのは、ハルくん。



こんな状態で、

仲西くんの気持ちに応えるなんて失礼過ぎるし、

でも、今までみたいにはっきり断ることも出来なかった。



ハルくん。

私は、どうしたらいいのかな……。


































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